プラトニックハニー
※せっちゃんがねこをひろってきました
「ええええええええええええええ!!」
「ロックオンうるさいぞ」
「耳塞いでる…それにしてもこの耳本物か?」
「あ、大丈夫?」
マイスター四人に囲まれ少女は頭の上のこげ茶色の耳をぺたりと伏せ、真ん丸い黒い瞳で彼らをただ見上げていた。白いワイシャツ一枚だけを羽織った少女は同じく白い太腿か覗くこげ茶色の尻尾を不安げに手にしながらその会話に耳を傾ける。ちなみに場所は地上にて設けられている刹那の自室である(とあるマンションの一室を借りているのだ)。そんな決して広くはない部屋に男が四人も集まれば明らかに圧迫感があるものだ。
「て、いうか刹那!この子どうしたんだ?」
「拾った、そこで」
「そこでってマンションの前でかい?」
「そうだ」
ロックオンとアレルヤの質問に淡々と答える刹那を尻目に少女を興味深げに見つめるティエリアはふと、熱心に此方を向く黒の瞳を見る。不安か、困惑か、僅かに滲んで見える大きな丸い瞳。改めてその容姿を見れば栗色の髪の毛から覗くこげ茶の耳と同じ色の長く細い尻尾、どちらも猫のようにふわふわの毛で覆われていていかにもさわり心地がよさそうなものである。そうして年齢は10歳ほどか、刹那よりは幾分も幼いと見受けられた。
「…(じー)」
「(同じく、じー)」
「…(じー)」
「(ふい)」←視線を反らす
「!」
揺れる肩、そこで初めて少女がアクションを起こした。そうして再び紅い双眸を向ければ少女は僅か嬉しそうにティエリアを見つめる。へたりと伏せられていた耳が立ち上がった。
「あ、ティエリアが幼女に手を出してる」
「な、この子が僕の事を見ていただけだ!」
「必死だね、ティエリア」
「黙れ、アレルヤ・ハプティズム…!」
恨めしそうにロックオンとアレルヤへ鋭い眼光を向けるティエリアに少女はびくりと眉尻を下げて後退した。と、少女の背中に当たる刹那、大袈裟に振り返る少女の耳がぴんと立った。
「!」
ティエリアと同じく朱色の双眸、少女は再びまじまじと今度は刹那の瞳を見つめた。そうして引っ切り無しにぴくぴくと動いている耳、思わずその裏側を撫でてやると少女は驚きながらもうっそりと瞳を細め、次第に気持ちよさ気に瞳を伏せたのだった。そのうちに刹那の腰に腕を回して小さく唸りながら少女は顔を埋める。唖然とそれを見つめるガンダムマイスター三人、刹那はその小動物のような愛らしさに表情にこそ出さないが僅か頬を染めて嬉しそうな様子だったらしい(ロックオン談)。
「ぅむー、んー」
ごろごろと喉を鳴らすのが分かる、ロックオンは至極興味深げに少女を見た。
「刹那って動物に好かれるタイプだな」
「うん、確かに…」
「…(羨ましくはない)」
いつの間にかぎゅうぎゅうとその腰に抱きつく少女は、真ん丸い瞳を刹那に向けて小さな口を開いた。
「なでて」
あ、喋れるんだ、やっぱり。アレルヤが一人小さく頷くと少女は刹那の腕をと取ってその腕に寄り添った。
本当に小動物のようである(確かに耳と尻尾はあるが)。
「…(なでなで)」
「(ごろごろ)」
「(平和だな)」
いつしか彼のストールにまで頬を摺り寄せて始末だ。刹那はやはり無表情のまま、しかし幸せそうに少女の耳を撫でたりそのまま栗色の髪を梳いてやった。
「で、どうすんの、刹那、その子」
「…ここに置いておく(ほくほく)」
「えええ!女の子だよ?その子!大丈夫なの!」
「俺がガンダムだ…!」
「先が思いやられるな、それにずっと此処にいるわけではないだろう、またすぐにガンダムに…」
「…そのときはスメラギ・李・ノリエガに頼む」
「なんてアバウトな…」
それでも刹那に擦り寄る少女はそんな会話などお構い無しにごろごろと喉を鳴らした。そこであ、と声を漏らすアレルヤ青年。少女の黒い瞳と刹那の朱色の瞳が彼に向いた。
「その子名前なんていうんだろうね」
「…名前、教えてくれ」
「…なまえ?」
「分からない、みたいだな」
「つけてやったらいいだろう」
「…3世紀ほど昔は日本じゃ猫にタマってつけるのが主流だったらしいね」
「タマかー、なんか可哀想だなあ」
「刹那つけてあげなよ」
「…エクシア(わくわく)」
「こらこらガンダムと融合しない」
「うー、んむー」
「リンっていうのはどうだ?」
「わ、なんかティエリアが言ってる」
「幼女に執着するティエリア」
「幼女趣味ティエリア」
「ロリコン」
「…(ぶち)万死に値するっ!」
そういうわけで刹那くんと子猫の同棲が始まるのであった。
プラトニックハニー!
(にゃー)(うお、なんかこの子がいうと犯罪の匂いがする)(…可愛い←心の中)