軽やかに口笛を

放課後の生徒会室
学園内の生徒は既に疎らな数になっている中、せっせと手を動かすのは約二名
一人は茶色の四方八方に曲がりくねった髪の毛を持つ少年と、一人は少年より濃い茶色の肩まで伸びる髪の毛の少女

「さー頑張れ頑張れー」

そして自分はやらないくせに、二人に煽りを掛けているのは我等が会長、ミレイだ
少女、は少々やつれた表情で彼女に振り返る

「会長、あとどれくらいですか…」

「んー、二人が頑張ってくれたからあと3枚かな」

「ま、まじっすか!よし!ほら、ルルーシュもやるやる!」

意気込んだは、隣で仕事もやらずに雑誌を読んでいるルルーシュの目の前に書類をチラつかせる
それを面倒くさそうに振り払ったルルーシュは、ため息をひとつ

「此処までお前達頑張ったんだから、俺が最後の手柄とったら悪いだろ」

「…う」

「ほらほら頑張れ」

薄情な奴め、とは恨めしそうにルルーシュを見つめてから、再び書類に取り掛かる
そして数分後、満面の笑みでペンを投げるの姿があった

「え、職員室にですか?」

がせっせと帰りの支度を進めている最中、スザクの声でそれが止まる
くるり、とが彼のほうを向けば、其処には困ったような表情のスザク
隣には飽きてしまったのか、自分はとっとと帰り支度を整えたルルーシュが視界に入った
が帰れるのはもう少し先になりそうだ

「会長、今度絶対クレープよろしくお願いしますよ?」

「はいはい、行ってらっしゃい」

半ば強制的に部屋を追い出された二人はゆっくりと職員室に向かう
生徒はさほどいなかったが、さすがに職員室前となると誰もいないわけではない
そんな中、二人の横をすれ違った男子生徒が上機嫌そうに口笛を吹いているのにスザクが気づいた
するとの表情が少しばかり曇る
そしてスザクは小さく納得して口を開いた

「そういえばって口笛吹けなかったよね?」

「…」

何を言い出すんだ、とでも言いたそうなの視線を受けつつ、スザクは問う

「…べ、別に吹けなくても支障はないもん」

ふい、とそっぽを向くにスザクは隠れて笑みを浮かべる

「(可愛いなあ)」

よもやスザクがそんなことを考えているなんては露知らず、頬を膨らませている
その時、スザクは何か閃いたように手を叩くと、ほくそ微笑んだ
そして少し前を行くを止める

「スザク?」

「じゃあさ、、口笛の吹き方教えてあげようか?」

ぱっとの表情が明るくなったのが分かる
それをいいことに、スザクはえっとね、といかにもな口調に変えた

「ちょっとこっち来て?」

夕日の差し込む窓際にスザクはを手招きすると、なんの躊躇いも無く近寄ってくる
首をかしげている彼女に、スザクはにっこりと笑みを浮かべた

「口笛はね、」

言いながら、スザクはの後頭部をぐ、と掴んだ
そしてそのまま自分の唇と、の柔らかな唇を押し付ける
何が起きているのかすら、一瞬理解しなかったは、目を白黒させて抵抗を見せたが両手に書類を持っているため、手は使えない
成す術も無く、スザクのキスを受ける羽目になったのだ

「…ん、んぅ」

くぐもった声がから漏れる
が抵抗しないのをいいことに、スザクはどんどんキスを深いものに変えていった
角度を何度も何度も変え、薄く開いた唇から舌を差し込めばの舌は逃げるように奥へと引っ込む
すかさずスザクが舌を絡めとり強く吸い付くと、の身体から力が抜けるのが分かった

「ふっ、んあ…」

いくら体格のいいスザクに隠れてるとはいえ、人が通るかもしれない恐怖には顔を背けようと必死だ
それが意味を成さないことぐらい、自分が一番知っているのだが
二人の身体に挟まれた書類がついに床に散らばった

それを薄目で確認したスザクはようやく唇を離した
眼下には自分と彼女の唇を繋ぐ銀の糸と頬を紅く染めた
ちゅ、と音を立てて糸を切ったスザクはこれ以上ないくらい笑顔で言い放つ

「分かった?舌の動き」

瞬間、の顔が更にぼっと紅くなる
散らばった書類を拾い集めて渡そうとすれば、は潤んだ瞳でスザクを睨みつけていた

「馬鹿っ」

怒っているのだが迫力は無く、逆に誘っているようにも見える彼女にスザクは再び笑みを零した

「だってが吹ける様に…」

「なんで口で説明できないのよ!」

ぷりぷりと怒ってしまったは、スザクに振り返らずに職員室へと早足で向かう
それがどうしようもなく可愛く見えてしまうスザクは相当重症らしい
自分も遅れを取らないようにと、彼女の後を着いていった

軽やかに口笛を

(これで吹ける様になったら僕のおかげだね)