わ た し だ け の 。


寒空に耳障りな風が吹く。ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが死んでから2ヶ月が経った。世の中はいつしか悪逆非道な可愛そうな皇帝のことなど忘れかけ、時の英雄となったゼロを崇拝していた。あれからテロ行動は勿論、目立った事件すら起きていない。それはゼロという称号による齎された平和であることは、確かである。誰も知らない、正義の味方。誰も知らない、正義の味方が泣いていることも。誰も知らない、正義の味方が苦しんでることも。誰も知らない、正義の味方が死んでいるということも。
ひっそりとしたマンション。外壁は真っ白、恐ろしいほどに。灰色の魔女に聞いた。ぜんぶ。探していた部屋へ辿り着き、貰った鍵を差し込んだ。鈍い音と共に開く純白の扉。今この時代に自動ドアでないところも少ないだろう。そんなことを思案して足を踏み入れた。眩い朝日は分厚いカーテンに遮られ、寒々しい殺風景な部屋の中に真っ白いベッドを見つけた。隣に置かれるチェストには、黒い、嘗て彼が着けていた、ゼロの仮面が置かれている。この悪魔の役は、この少年に引き継がれた。もう二度と、彼の名前を呼んでくれる者は、いないのだろうか。そう、彼は死んでいるのだ。時折揺れるシーツの塊から漏れる嗚咽。あたしは唇を噛み締めた。ゆっくりベッドに近づいて、恐らく頭の位置であろう場所に手を置いた。真っ白いシーツと真っ白い枕の隙間から覗くくるくるとした栗色。優しく優しく、撫でる。


「ごめんね」

嗚咽は止まらない。シーツの塊はひくひくと震え、鼻を啜る音も、聞こえた。彼は、毎朝毎朝、こうやって一人ぼっちで、泣いているのだ。彼を認めてくれた人は、もういない。否、何度も言うようだが、彼は死んだのだから。この少年という人間はこの先一生、誰かに知られることはない。この仮面に、隠れるのだ。

「ごめんね」

何度も何度も確かめるように頭を撫でた。それでも泣き続ける彼に、目頭が熱くなって、思わず彼に抱きついた。強く強く抱き締める。息ができないかもしれない、苦しいかもしれない、だけど、もっともっと、彼は苦しい。辛かった。
ルルーシュは、呪いを掛けて、死んでいった。それは少年に対する、ギアスという呪い。それは魔女に対する、愛という呪い。それは、あたしに対する、希望という、光という、儚い、思い出という、呪いを。そして、ただ一人の妹には、生という呪いを。


「ごめんね、――迎えに、来たよ。」

そっとシーツをずらす。見えたのは、真っ赤に染まった、泪がいっぱい溜まった、痛々しい翡翠。ああ、ごめんね。こんなにも遅れてしまって。あたしはいつまででも、君を、待っていたのに。ほんとうに、待っていたのは、君だったんだね。もう、一人で、苦しまないで、一人で、泣かないで、一人で、抱えないで。貴方には、あたしが、いるよ。


スザク。


もう、ひとりじゃ、ないよ


A only only only my star.





















(あなたを、すくいたい)