ふたりきり!
ビッチ女王様ヒロイン×真っ白すざくさん
「え、ちょ、ちょ、待ってって!!」
叫ぶように懇望すれば少女は不服そうに唇を尖らせて眼下の少年を睨んだ。林檎のように顔を真っ赤にしてそんなを見上げるスザクは男のくせに情けなくも、こんな小柄な少女にベッドへ押し倒され、挙句制服まで剥ぎ取られかけていた。そしてそのスザクの上に跨るはワイシャツのボタンを三つまで開け、その上短い丈のままのスカートで跨るのだから下着も丸見えである。何よ、と真ん丸い黒の瞳をす、と細め、は問うた。
「あの、だから、…」
「いいでしょ!あたしスザクのこと好きだし、スザクだってあたしのこと好きでしょ?」
「そ、うだけど…」
「スザクはあたしのこと好きじゃないの?」
「そんなこと言ってないよ!」
「…じゃあいいじゃない」
と、言いつつそそくさとスザクの制服に再び手を掛けるの小さな手を掴む。一体このベッドの上で何の攻防戦が行われているかというと、率直な話、はスザクと愛を確かめ合いたいのである。だって処女ではないし、大体二人が付き合ってから初々しいキスまでしか行われてないということがは不服なのだ。そんなわけで今日、軍がないというスザクをこの保健室に呼び出して早速押し倒したというわけだ。しかしスザクはただ真っ赤になっての手を止めるだけで。はぐぐ、と眉を寄せて声を荒げた。
「なんで抵抗するの!」
「そりゃするよ!」
さて、スザク少年の意見はこうだ。スザクは勿論を好きだし、愛している。だからこそ、こういう行為はこんな公共の場が初めてではあっていけないとも思うし、尤ももっともっと二人の意思を疎通してからだと、主張した。正直、は愛らしいしこんな格好で跨られたらはっきり言えば、危ない。自分の理性も含めてだ。スザクとしてはセックスが愛を確かめ合う最善の術とは思えないのだ。言えばはとうとう表情を歪めてスザクの無駄に厚い胸板を思いっきり殴ってからベッドから飛び降りる。
「…っ、分かったもういい!スザクなんて知らない!」
痛みに呻くスザクに一瞥もくれずには一目散に保健室を飛び出していった。勿論、あの格好のまま、である。スザクははと、それを思い出して勢い良く飛び起き、に続いて保健室を飛び出た。の足は速い、陸上部にだって何度も勧誘されたほどである。無論、軍人であるスザクには適いはしないが。それでも俊足のはスザクが保健室を出た頃には既に廊下の突き当たりにあった。そして角を曲がると思いきや、その先に誰かを見つけたのだろう、声を上げて駆け寄っていった。
「ルルーシュ!」
聞こえた幼馴染の名前にスザクは一瞬、眩暈を感じた。なんてことだ、ルルーシュにあのの格好を見せてしまうなんて。幸い生徒達は各自の教室にいるため、廊下に人は見えなかった。大急ぎで角を曲がると、スザクは目を見開いた。
「…え」
数冊の教科書を手にしたルルーシュに飛びつくようにしてその唇に自分の唇を押し当てている恋人の姿。やはり格好はブレザーを脱いだままのワイシャツ姿であった。(おまけに短いスカートはさらに捲れ上がっていた)目を白黒させるルルーシュから漸く顔を離したはそのまま彼の背中に回って細い胴体に抱きついた。
「あたしルルーシュと付き合うから!」
今だ目を丸くするルルーシュを間に挟んでの言葉だった。スザクは暫し唖然とした様子でそれを見つめ、漸く我に返ったルルーシュが呆れた声を漏らす。
「…お前ら、痴話喧嘩なら他でやれ」
「喧嘩じゃないもん!あたしもうスザクと別れた!たった今からルルーシュと付き合うもん!」
「…、はあ。何があったんだ、スザク」
耳を貸そうとしないに、呆れたようにルルーシュはアメジストをスザクに向けた。スザクは申し訳なさそうにルルーシュにごめん、と口先で伝えると今だ彼の背中に抱きついているに歩み寄る。細い胴体に巻きつく同じく細い腕はがっちりとホールドされていて、被害者になりつつあるルルーシュが肩を竦めた。
「、ごめんってば…」
「やだ!来ないで!もうスザクとは別れたんだから!」
近づいてくるスザクからルルーシュを引きずったまま逃げる。こんな小柄な少女に引きずられているルルーシュ少年の名誉が些か気になるところであった。
「…」
「スザクはあたしのこと嫌いなんでしょ!もういいよ!…っ、もう、いい!」
そこで初めてが泣いていることに気付いた。ルルーシュも気付いていなかったのだろう、驚いてスザクを見た。それからその女性よりももっと整った美少年の表情がみるみるうちに歪んでいく。形の良い眉はきつく寄せられて、アメジストは鋭さを増した。お前に何してるんだ、とか言い出しそうなルルーシュは言い忘れていたが現段階の保護者として学園中に知れ渡っていた。それでもお互い恋愛感情を持ち合わせないところ、親密な友情が二人の間にあるのだろう。羨ましい、とスザクが数日前にぼやいていたのをミレイは聞き逃さなかった。
「(スザク!お前、)」
「(これはっ、誤解だってば!ルルーシュ!)」
依然ルルーシュに抱きついたままのをなんとか剥がすことに成功したスザクはこのままルルーシュには迷惑をかけられないと、ぐずるを所謂お姫様抱っこというやつで運び出した。
「ごめんね、ルルー…あいて!」
「やだ、放してよ!馬鹿スザク!死ね!」
ばったんばったんとスザクの腕の中で暴れまわる少女を器用にも落とさず運ぶ彼はやはり軍人だった、ルルーシュは騒がしい二人の背中を暫し見つめ大きくため息をついた。
「よいしょっと、」
「放してよ!ばか!もうスザクなんて知らないんだから!」
結局駆け込めるところといえば先ほどの保健室で、スザクはベッドの上に静かにを下ろすとその肩を掴んだ。今だ泣きながら抵抗を続けるは更に激しく泣き出した。
「もっ、知らなっ、…うええっ、」
ようやく抵抗がなくなった少女に、スザクはほっと胸をなでおろす。それからきちんとに向き直ると、真っ直ぐその泪で濡れた黒の瞳を見つめる。
「、聞いて」
「ふえっ、うう、」
「僕はのこと大好きだし、愛してるよ、でも…だからこそとの仲を大切にしていきたいんだ」
「…ふ、…、うえ」
段々と大人しさを戻すは目元を何度も何度も擦りながら漸くスザクを見た。
「が嫌いだからしないんじゃなくてね、が大好きだからまだしたくないんだ、だから僕達がもう少し大きくなってからいっぱいいっぱい、しよ?ね?」
あやすようにその髪の毛を撫でながら言い聞かせる。濡れる大きな瞳を真ん丸くしては先ほどとは別人のようにきょとり、と首をかしげた。
「…ほんと」
「本当」
「嫌いじゃないの」
「勿論だよ」
にっこり微笑み、薄く開いた唇に優しくキスを落とす。は困ったように眉尻を下げてから再びぽろりと涙を零した。それから痛いほどスザクに抱きついてうえうえと声を漏らした。そんな少女を愛しそうにスザクはそっと背中をさすった。
「ばかすざくー…」
結局そんな二人がこっそり保健室から出てきたのはすっかり日が落ちた頃だった。真っ赤になった目元に偶然通りかかったシャーリーが大袈裟に驚いていたのが記憶に残っている。
そして翌日。
「じゃーん!どうスザク!」
「ぶっ!」
神聖な生徒会室に似つかわしい声の後、ミレイの嬉しそうな声が響いた。
「あらー!大胆な格好してるわねえ!可愛いわよ!」
「…、ど、どしたの、」
「スザクの性欲が倍増するようにね、咲世子さんに手伝ってもらったの!」
そう嬉しそうに話すの格好といえば猫耳、尻尾、それから胸元は異常に開かれていて短いスカートは更に短くなっていて、はっきり言えば下着が見えそうだった。剥き出しの白い太腿と豊富とは言えない、しかし形のいい胸が顔を覗かせていて、リヴァルとスザクは鼻の付け根をしっかりと押さえていた。そして読書を楽しんでいたルルーシュといえば、一瞬目を丸くしてからばったりと倒れこんだ。
「きゃー!ルルー!」
「おま、スザク、…よく、我慢できる…ぶはっ」
「可愛いわよー!」
君と僕、世界にふたりきりだったら良かったのに
(はやくあいしあいたいの!)