憂鬱をまたぐ、星のひとつひとつを

低い羽音だけのその空間に、そのうち苦しそうな短い悲鳴が聞こえたり、聞こえなくなったり、時々衣服のこすれる音がただ響いていた。音はルルーシュが出しているわけではない。少年は綺麗な白い指先でデスクの上の書類を弄っているだけだ。アメジストは決して書類以外を見ない。はあ、と辛そうな声が漏れる。

あれから20分、経っただろうか、ルルーシュは時計を見た。今時珍しいアナログ時計である。3にあったはずの長針はいつのまにか6を越していた。15分と、少しである。ルルーシュはふむ、と首筋に手を当てて首をひねった。

「辛いか?」

ルルーシュが問いかけたのは勿論第三者である。一見彼しかいないように感じられる部屋には無論、彼が問いかけるべきもう一人の人間がいた。アメジストが漸くソファーに向いた。見えたのは、上物そうな革のソファーと、それに腰掛ける一人の少女である。白の、これまた上物そうなその騎士服を身に着けた少女は小さな手で自分の口元を一生懸命押さえ込んでいた。身体は小刻みに震えている。初めは背筋も伸ばして座っていたものの、5分も過ぎればその薄い背中は丸まって、がたがたと震えだした。今やすらりと伸びた白い足は膝を擦り合わせるようにして内股になっているし、少女自身、前のめりの状態になっていた。

「…っ、」

少女、ルルーシュの専属の騎士である凛は彼の問いに緩く首を横に振ってまた何かに耐えるように蹲る。しぶといな、少年の白い眉間に皺が寄った。

「そうか、まだ大丈夫なんだな」

その言葉に凛の肩が大きく揺れた。それからやっと(今は涙で潤んでいる)黒い大きな瞳がルルーシュを見た。

「もうひとつ、強くしてみようか」

立ち上がったルルーシュは凛の真横に放り投げられているその白の小さな何かを手に取り、微笑んだ。かちかち、と5段階になっているそれを2番目から4番目まで上げる。瞬間、ひ、と小さな悲鳴が響いた。

「っ、あ、…!」

凛は辛そうに瞳を硬く閉じてまた蹲る。口元から漏れそうになるそれをなんとか手で押さえ込みながら、浅く呼吸を繰り返した。

ルルーシュが持っているのは、所謂大人の玩具であるそれの遠隔リモコンだった。肝心のそれは無論、凛の膣内に埋め込まれていた。振動が緩いものから急に強いものに変えられ、その身体の震えは大きくなる一方である。ルルーシュはそんな凛を見下ろして、告げた。

「此方を見ろ、凛」

ゆっくりゆっくり凛の顔が上がる。涙と汗でぐちゃぐちゃになった悲痛に染まる表情を暫し見つめ、ルルーシュはため息をついた。

「お前はよく言いつけを守る出来た騎士だよ、」

「、…ぁ、く、」

肩で息を続ける凛はなんとかルルーシュを見つめる。確かに出来た騎士だ。いきなり主の執務室に呼ばれたかと思えばグロテスクなその玩具を自分で中に挿れろと言われ、凛は戸惑いながらも素直に従ったのだ。何も聞かされていないのに、凛は泣きそうになりながらなんとかそれを自分の中に収めた。それから15分以上、仕事が終わるまでそこで待っていろ、と今度は脱いだ衣服をきっちり着ることを命令され、ソファーにて待機だ。

「辛いのなら振動を緩めてもいいといったのにな、」

だからわざわざリモコンを彼女の隣に置いてやったというのに。しかし彼女は何度かそのリモコンを見ただけで決して触れなかった。震えながら、耐えていた。

「素直に言えばいい、辛いと、抜いて欲しいと」

出掛けることもないのでラフではあるがどこぞの高そうな服を身にまとったルルーシュが冷めた瞳で凛を見る。そのうちに黒い瞳に溜まっていた涙が段々と膜を張った。そうしてぼたり、とそれが落下する。

「お前はマゾなのか?」

ルルーシュがおかしそうに笑う。凛は白くなるほど唇を噛み締めてぼろぼろと涙をこぼした。勿論、瞳はルルーシュを捕らえたままだ。ルルーシュがそう、命令したからである。凛は本当によく出来た騎士だ。待てと言われればいつまででも待っているし、ついて来いといえばどこへでもぴったりついてくる。まるで忠実な犬であった。

「あ、ぁ、…で、か」

ふと見た時計は今度は8を長針が指している。凛はもう限界だった、誰が見てもそう推測できる。

「どうした」

「はう、あ、…っ、」

「なんだ、もっと強くしてほしいのか?」

そう言うなりルルーシュは指先で一番上までそれをかちり、と押し上げる。凛の瞳が大きく見開かれて溜まっていた涙が勢い良く弾けた。

「あっ、あっ、ふあっ、でん、かあっ…!や、いや、やあっ、ぁう、ごめんなさあっ、」

ついに凛は我慢できないというようにルルーシュに縋り付いた。

そもそもルルーシュがこんな行動に乗り出したのに理由があるか、と問われれば明確なそれはなかった。暇つぶし、というのが一番妥当な答えだろうか。あまりにも完璧な凛を、崩してみたかったのかもしれない。もっと他の方法があるといえばあるが、ルルーシュはどうしてもこうした方法で凛を崩してみたかった。自分に縋ることでしか苦難を乗り越えられない、それは一種の独占欲に似ている。そうして今ついに、凛が崩れた。ルルーシュに縋った。命令を撤回してほしいと、助けて欲しいと、凛は訴えた。

「どうしてほしい?」

そ、と汗ばんだ白い頬を撫でる。凛は何度も何度も浅い呼吸を繰り返して、一度生唾を飲んだ。

「あ、助けて、くだ、さいっ、」

これが聞きたかったのだと、ルルーシュは微笑んだ。


静かに凛の前に跪いたルルーシュは少女の膝の上できつく握り締められた手を取った。握り締めすぎて小さな手のひらには爪の痕がくっきり血とともに滲んでいる。凛は恐る恐るルルーシュの行動を見つめた。

「血が出てるな、」

そう言って、べろり、とそれを舐めた。

「っひ、やっ、殿下っ、んん」

結局一時間近くその状態で放置された凛の身体は全部がまるで性感帯のようになっていて、少女は甘い悲鳴を上げた。それでもルルーシュはかまわないというように、べろべろと少し汗ばんだ手のひらを舐め上げていく。こんなのおかしい、と凛は泣いた。主であるルルーシュが自分の前に跪いてそうして手のひらを舐めて、結局玩具は未だ自分の中で蠢いている。

「んっ、やっ、ひああっ、殿下ああ、」

ちゅう、と強く指先を吸い上げてしまえば凛はなんということか、びくびくと身体をしならせて達してしまった。緊迫していた小さな身体がぼすり、とソファーに凭れ掛かる。ルルーシュがやっと立ち上がった。

「イったのか?」

「うっ、ふえっ、あ」

凛がルルーシュの命令に従わなかったのはそれが初めてだった。ルルーシュの問いかけにまったく答えようとしないで腕で目元を隠しながら泣いていた。よほどルルーシュの前であっけなく達したことが羞恥だったのだろう。顔をこれ異常ないほど赤くして泣いていた。

「ごめんなさあっ、あっ、ごめんなさっ、ごめんな、さいぃ、」

誰も謝罪を強要していないのに、凛はひたすらに謝っていた。何に引け目を感じたんだろうか、ルルーシュは暫しそんな凛を見てから優しく頭を撫でる。

「謝らなくていい、」

「っ、ふ、…んう」

凛がルルーシュを見上げた瞬間、その唇を塞がれる。凛の柔らかい唇は少ししょっぱかった。

「ふえ、っ殿下」

残念ながらここまでしても凛にルルーシュの真意が伝わることはなかった。ルルーシュは濡れてびっしょりになった凛のズボン越しに恥部を撫でる。あ、と再び凛が喘いだ。

「怒ってるか、凛」

「え、あ…なんで、ですか?」

ここまできて凛は疑問符を浮かべるだけだ。そんな少女にルルーシュは小さく微笑んで、そうか、と肩をすくめた。

「では命令だ、凛、俺の退屈しのぎに付き合え」

イエスユアハイネス、凛は顔を真っ赤にしながら肩で息をしながら、なんとかそう返答した。



憂鬱をまたぐ星々のひとつひとつを


ルルーシュがただの変態で申し訳ないです、意味はないですおちもないです。真っ白ヒロインちゃんと策士家(またの名をただの変態)ルルーシュでした、お粗末さまでした。