日がすっかり落ちていつもの11時が来た。自室のデジタル時計がちょうど11時零分を表示した頃、ノックが聞こえる。は今日もしっかりスザクの自室にやってきたのだ。入るように言えばは暗闇の中にベッドの上のスザクを見つけて頭を下げる。今日もいつもと同じ、が現れてから平坦な日常は何処かへ消えたが、けれど最近の日々はあまりにも平穏過ぎた。はいつまで自分の命令に従っているのだろう、いつになったらこの行為の虚しさに、悲しさに気づいて嘆くのだろう。スザクはそっとを見上げた。

「枢木卿…」

がぽつりとスザクを呼んだ。珍しいことである。ベッドに座るスザクの脇に足を止めたは俯いて唇を噛んだ。何か言いたげのは暫く口元を噤んでからひゅ、と息を吸う。

「わ、わたし、あの…」

「何」

「…」

珍しい、が部屋に入った早々口を開くことなど。もどかしいような気がして苛々してしまう。スザクはそんな自分を落ち着けるように一度息を吸った。駄目だ、彼女を目の前にすると我を見失ってしまう気がする。が恐る恐るスザクを見た。

「わたし、明日から…前線に出ます、黒の騎士団との硬直が続いている、アタミ沿岸付近です」

スザクがと出会ってから彼女が戦場に赴くことは初めてだ。スザクが見るたびはいつも事務的な仕事しか請け負っていないのだ。一等兵で戦場など、彼女達が必要とされている意義が手に取るようにわかる。スザクは眉を寄せた。

「…ナイトメアには、乗るの?」

「いえ、…わたしは名誉ブリタニア人の上に一等兵ですから…ナイトメアは搭乗できません」

確かにの地位は一等兵、ナイトメアに搭乗するには低すぎる。だがいまや多くのナイトメアにフロートシステムが搭載されている時代だ。地上戦のナイトメアの量産などとうに済んでいるし、使われていない機体だっていくつもあるだろう。だが彼女は歩兵として戦地に赴くのだ。それはあまりに無謀であまりに

「無意味だ」

「…はい、今更歩兵など、何の役にも立たない、ですから」

だが彼女にそれを拒む権利は無い。がぐ、と唇を噛み締める。

「…だから、その」

歩兵など、いわば自殺行為。空中戦のナイトメアに地上の人間など見える戦力ではないのだ。が泣きそうに表情を歪めて俯いた。スザクは静かにを見上げて口を開く。

「わたし、…その」

「…死ぬかもしれない、ってこと?」

核心を突いた物言い。はぐ、と息を詰まらせて顔を上げた。泣きそう、というよりも今にもその瞳からは涙が零れ落ちてしまいそうである。スザクとしてはいくら歩兵であったとしても、そう簡単に戦場で死ぬなど、ありえないと思ってた。いや、正確にはそう誤認していた。それはスザクがナイトメアに搭乗しているからであって、そしてスザクのナイトメア技術が飛びぬけて優秀であるからだ。スザクはよく分からないような気持ちに襲われて、舌を打った。の身体がびくりと揺れる。

「明日死ぬかもしれないから、だから今日くらい優しくしろってことだろ?」

言えばはついに涙を零して首を横に振った。違います、と薄い桃色の唇から漏れる。

「ちがいます、枢木卿、わたしっ、…」

「いいよ、優しくしてあげるよ、怖いくらい、優しくしてあげる」

そう言うと細い手首を掴んでベッドに放り投げる。反射的に瞳を瞑ったが次に目を開ける頃には覆いかぶさってきたスザクが無表情のままにを見下ろしていた。す、とその手はの首筋を滑ってから一つ一つ丁寧にボタンを外していく。いつもならば性急にズボンだけ脱がされるとしては、その行動はあまりにむず痒いものだ。露になった白い膨らみ、下着すら剥ぎ取られるのではなく、丁寧に外されて、はぎゅう、と瞳を瞑った。

「…っひ」

ゆっくりと、形を確かめるように揉み込まれる。むにい、と音がするほど円を描くように揉むと、少しだけ反応を示す突起をスザクは指で弾いた。跳ねる白い肢体をあくまで優しく押さえつけ、横に逃げる胸の肉を真ん中に寄せ集めて乳首を吸い上げる。の短い悲鳴が時折響いては消えた。スザクは一度上体を起こして硬く瞳を瞑るを見下ろす、ズボンもゆっくり脱がせて、そのまま下着もずらした。さすがに薄く瞳を開いて様子を伺うを、スザクは自分でも分かるほど冷えた瞳で見下ろしてから足の付け根に指を滑らせた。

「ふ、…んぅ、」

あまりにも優しくスザクが接するせいで、のそこは既に濡れそぼっていた。やはり身体は素直である。そう思案してから人差し指と中指を合わせると、熱く少し膨らんだ膣内に差し込んだ。くち、と粘着性の高い音を立てての中に侵入したスザクは、毎晩身体を重ねることで知った彼女のいいところばかりを狙って突く。の瞳からぼろり、と涙が零れた。こんなに優しく扱われたのは初めてなのだろう。彼女の身体を開く男達の目的は常に自身の快感のため、が痛がろうが泣こうが、そんなの構わないのだ。

「…ひ、ぅん、ぁ」

ぬちゃり、と音を立てながらの膣口を人差し指と中指で広げ、膨張したそれを挿入する。何度身体を重ねても、のここはいつまで経ってもきついままだ。思わず眉を寄せるが、眼下に更に辛そうに唇を噛む少女を見て肩を竦める。ぐりぐりとなんとか根元まで差し込むと、指を離した。引きちぎられるほど強く絞り込まれて、吐精を我慢するのにスザクは必死だった。薄い腰を掴んでゆっくり、優しく、挿入を開始する。の口から久しぶりに快感に溺れた嬌声を聞いた気がする。薄く開いた唇の間から真っ赤な舌が見えた。

「ふ、…あ、…んん」

「…っ、」

の背中とシーツの間に手を差し込んでそのまま肢体を抱き上げる。自分の上に小さな身体を乗せれば、子宮口近くまでスザクの先端が届いてが小さく悲鳴を上げた。下からの突き上げは正常位よりも奥を抉る所為か、の目じりの涙が更に滲む。がふと、薄く瞳を開いた。

「あっ、あっ、くる、ぎ、きょうっ、…んっ」

スザクの肩にそっと手を置くだけのはなんとかもつれる舌で言葉を紡ぎだす。スザクの翡翠がを見た。

「あっ、…ん、くるるぎきょう、わたし、あの、」

「…何」

ずんずんとした突き上げを止めての呼吸が落ち着くまで待つ。は一度息を飲み込んで肩を揺らした。

「ご、ご無礼を、承知で、申し上げま、す…あの、どうか、わたしの、わがままを、いちどだけ聞いて、くださいません、か」

があまりにも切なそうに、悲しそうに言うものだからスザクは口の中に控えていた反論を思わず飲み込んでしまった。スザクはただの言葉を待った。

「…、どうか、わたしに、キスを、し、して、いただけ、ませんか、」

ぼろり、との瞳から涙が零れた。
スザクは驚きのあまりに一度目を丸くするが、目の前の真っ赤な表情のを見て何故だか口角が上がってしまう。愛しいと、思ってしまった。スザクの返答を瞳を硬く閉じてただ待つだけのの頬に優しく触れる。
驚いてこちらを見る真っ黒な瞳が、愛しいと、ふるふると震える少女が、愛しいと。スザクは、そのとき初めて気づいた。今まで、気づかぬ振りをしていた。それを認めてしまうのが、悔しくて、だけど今思い知らされた。このえもいえぬような感情は、つまり愛情だったのである。

「くるる、…んぅ」

柔らかくて、涙で少し濡れた唇にそれを押し当てる。にキスしたのはこれが初めてだった。驚きで薄く開いた唇の間から舌を差し込んで中で縮こまれるの舌を絡め取った。途中、突き上げるのを再開すればの悲鳴は口の中に消える。

「ふ、ん、ん、んぁ、っ、」

っ、…、」

もう何がなんだか分からないほど、スザクは陶酔していた。絡み合う舌と舌。響く肌と肌のぶつかり合う音。気持ちよくて、征服感とか、そういうものじゃない、満たされた、気持ちになった。

「くるぎ、きょうっ、あっ、んんっ、ふあっ、」

っ…」

唇を離して小さな、脆い、身体を抱きしめた。は泣いていた。理由はよく分からない。痛いわけではないし、悲しいわけではないだろうけど、スザクにはの涙の意味がよく分からなかった。は、泣いていた。

「くるる、ぎ、きょう…、」

の白くて、細い、腕がスザクの首に回った。その首元に顔を埋めては泣いた。

「     」

の膣内の奥の奥で、スザクは欲を吐き出した。