「ルルーシュ」

明日は、全てが終わり、全てが始まる日。
ゼロ・レクイエムは、成功させねばならない。呼べばブリタニア皇帝は綺麗なアメジストの瞳を僕に向けた。


「僕は、君に大切な人を、二人も奪われた」

「…二人、」

ルルーシュが思い当たるのはユフィだけだ。一度視線を落とすとルルーシュの長い睫が白い頬に影を作った。手渡されたゼロの仮面を見つめる。ゼロ、正義の味方、平和の象徴。僕はゼロになる。ルルーシュを殺して。新たなる優しい世界を、生きるのだ。

「スザク、」

ルルーシュが僕の手に触れた。ルルーシュの白い手が触れた僕の手は、震えていた。

「明日は全てが終わり、全ての始まりの日だ」

もう何もかも、終わる。

「その憎しみも、俺に託せ、スザク」

けれど、こんな憎しみを、は望んではいない。海の見えるあの場所で、はきっと僕を見てくれている。優しい世界を、見てくれている。

「全ての憎悪を、この世から消し去る、だからお前は明日、ゼロ・レクイエムを成功させねばならない」

鎮魂歌、美しい、音。世界は、美しいものに、なる。

「そうだろう、スザク」



が消えてしまった日から、随分の月日が立った。明日はゼロ・レクイエム。僕はもう、枢木スザクではなくなる。けれど、僕は一生、枢木の兄だ。優しくて、泣き虫で、全てを背負い込んでしまうの、兄だ。きっとは優しいし、可愛いから天国とやらで、うまくやっているだろう。ああ、ユフィならが僕の妹だと知れば優しく微笑んでくれるだろう。きっと二人は仲良しになれる。

、どうか僕がもう一度君に出会えるまで、この愚かな兄を待っていてくれないか。
懺悔したいことが、たくさんある。そして僕がを愛しているということを、伝えられなかったのが最大の後悔だ。今はもう伝えることは出来ないけど、どうかに僕がどんなに君を愛しているか、知っていて欲しかった。君の兄であることがどんなに幸せか、知っていて欲しかった。とキスしたことも、泣かせてしまったことも、繋がっていたことも、決して決して忘れない。ゼロになっても、僕が死ぬまで、君と過ごした日々を、忘れないよ。



もし、生まれ変われることが出来たなら、僕はもう間違えない。もう一度君の兄として。
もう一度君を愛することを、誓うよ。



だからそのときまで、どうか、笑って、待っていて。



きっと今だけが暗闇じゃない。
だけど私だって、期待したかった。
それが許されないことだったのね。
今更、愚かな自分に気づいたの。
ねえ、だからまたこの罰なのかな。
そして、一瞬だけの安息は。
またも私を黒へ導くのね。
決して叶う事のない願いとともに。
白昼夢なんて優しいものじゃないわ。
もっともっと、暗くて痛い。
それを人は現実と呼ぶのか。
たとえそれが永遠の苦しみでも。
曖昧な残酷さにいつまで胸を痛めて
泣いたって何も変わらないのよ。
そして嘘と偽りが心臓を殺す。
溢れ出るそれを知る術は無くて。
両手で押さえても、零れてしまう。
指と指の隙間から止まってくれない。
それが涙だと気づかぬまま。
永遠に泣き続けなさい。
そして、あいしてください。


そうすれば、暗闇は消える。
期待は、幸福に変わる。
愚かな自分も、許される。
この罰も、安息に変わって、
黒が光を導いてくれる。
叶うことの無い願いも、
無意味な白昼夢も
優しい現実に、訪れる。
永遠の苦しみさえ、消え
曖昧な残酷に泣くことも無い。
嘘と偽りは、心臓を撫でて
あふれ出る涙も、優しい粒に。
もう泣かないで、

そしてあいすることを、やめないで。
もう、嘘はいらないから。


Liar's dreamy story.
(嘘つきのすてきな作り話。)



12.11