「ルルーシュ!」
停止したエレベーターを駆け上がり、其処に見えたのはあの男性とルルーシュだった
は目を見開いて蹲る男性と彼に手を掛けるルルーシュに走り寄る
腕を硬直化させ、最早それは武器と化しは眼光を鋭くした
何が起きているのかは分からなかった、しかし、相手は敵であり、ギアスキャンセラー
が高く飛躍して、照準を彼に定めた
「待て、!」
瞬間響いたルルーシュの声音に、は大袈裟に肩を揺らして地に足を着く
静かに立ち上がったルルーシュのあとに、立ち上がる男性は黒い血を仮面の下から流していた
「ルルーシュ、そいつは!」
「いいや、、彼は見方だ」
「見方…!?」
男、ジェレミア・ゴットバルトを今だ敵視するの眼光は鋭い
ルルーシュは自身の策によって弱ったジェレミアを一瞥し、を見た
ジェレミアは見方だった、V.Vの手下でなければ、敵でもない
この男はマリアンヌ皇妃の息子であるルルーシュのゼロとしての意思を確かめに来たのだった
「…それは、本当なの」
「ああ」
は今だ床に片膝を着くジェレミアを見下ろしてからそっとルルーシュを見上げる
彼が敵でないことは幸いだった、ギアスキャンセラーなどルルーシュの天敵といえるだろう
複雑そうに表情を歪め、は小さく頷いた
「戦うなよ、」
「分かってる」
が不服そうに返答したのは、ルルーシュの気のせいではなかった
ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアとして彼に忠誠を誓ったのは自分だけであったのに、にはそういった感情があった
可愛らしく言えば嫉妬だ、彼に優しく接してるルルーシュが気に食わないのだ
は唇を僅か尖らせて踵を返したルルーシュの背中を見つめる
この場の障害はとこのジェレミアが排除するとして、彼にはまだやることはあったのだ
消えていく足音に、はゆっくり振り返って自分を見上げるジェレミアを一瞥する
「…、あたし、貴方の事信じてないから」
そうはっきりと告げるに、ジェレミアは目を丸くした
「マリアンヌ様のこととか、ブリタニアの事に関してはあんまり分からないけど
貴方よりあたしの方が長くルルーシュの傍にいてきた、…彼を護るのはあたし、だから」
それでも鋭い敵視は消えたは静かにジェレミアに手を差し伸べた
白く小さな手は本来戦いなど知らないはずなのに、の手は既に真っ赤に染まっていた
ジェレミアは一瞬表情を崩してから、彼女の手を取った
霧が掛かったショッピングモールの中を走り抜ける
これといった障害は無く、はひたすらにルルーシュと、そしてシャーリーを探していた
彼女はあの後結局ルルーシュに会えたのだろうか、会えて全て告げられたのだろうか
シャーリーを大切に思うルルーシュだからこそ、きっと彼女の決意は辛いとは思うがそれでも
彼女の無垢で、一途で、そして強い想いはきっと彼に届くはずだ、はそう確信していた
だから、何も分かりはしなかった
「ルルーシュ、ロロ」
学生服のロロと、その後ろにはルルーシュがいては慌てて彼らに駆け寄った
二人に外傷はなく、争った形跡も無いところ無事だったのだろう
安堵の笑みを零すに、ルルーシュはただ俯いていただけだった
ルルーシュ、が小さく彼の名を呼ぶとロロが彼女を見る
「さん、これからギアス饗団に行ってギアスの殲滅をします」
「ギアス饗団…?ギアスの殲滅、なんで?」
聞きなれない言葉と確認には目を丸くしてルルーシュを見る
ルルーシュは何も言わない、此方を見向きもしなかった
そんな彼を不審に思いながらもは思い出したように口を開く
「そうだ、ルルーシュ、あのね、此処に」
「ロロ、悪いが先に行っててくれるか、俺はまだ行くところがあってな」
「…、分かった、気をつけてね、兄さん」
の言葉を強引に遮って伝えられたルルーシュの言葉に、ロロは首をかしげてそして笑んだ
こういったときの笑顔だけは、無垢に見えるとは思案した
まだロロの背中が見えるうち、は遮られた言葉を再び口にしてルルーシュを見る
「ルルーシュ、だから此処にシャーリーが、」
「」
こつり、こつり、ロロの足音は直に消えていった
ルルーシュは再び彼女の名前を呼んで、そして言葉を遮る
一度眉を顰めるも、しかし彼の尋常ではない様子に不安そうに辺りを見た
何か、あったのだろうか、
「ルルーシュ、どうしたの、何があったの?シャーリーと会わなかった?彼女此処に来てて」
「、」
再び名前を呼ぶ、ルルーシュはやっとを見た
刹那少女は目を見開いた、綺麗な綺麗なアメジストには僅か水滴が溜まり虚ろ気に淀んでいたのだ
ただならぬ雰囲気に、鼓動が早くなる
彼に一歩、また一歩と近づいて、そっとその手を取った
「ルルーシュ?」
少年は一度瞳を閉じて、それから精一杯酸素を取り入れて、口を開いた
「シャーリー、は、死んだ、」
まるで水滴がぽちゃん、ぽちゃん、と落ちていくように告げられる言葉
たった一言をの脳が理解するまでひどく時間を要した
シャーリーが、死んだ、
の脳裏にふ、と先ほど偶然出くわした少女の笑顔が浮かんだ
「うそ」
無意識に出た言葉に、ルルーシュは何も言わなかった
うそ、うそ、うそだ、はただ壊れたようにそう漏らして彼の手を強く握る
嘘だ、在りえない、彼女は先ほど自分と会って、大好きな彼に会いに来て、大好きな彼の本当になりたいと言って
ギアスで消された記憶を取り戻して、厳しすぎる現実をそっと受け入れて、自分を、友達だと、言ってくれて
シャーリーは、ルルーシュを好きで、
「うそ…」
「は黒の騎士団かもしれないけど、でも私達友達だもの、また会えるよね」
シャーリーは、優しかった
泣き崩れるを、ルルーシュはそっと受け止めた
下唇を血が出るほどに噛んで、嗚咽を押し殺して、泣くをルルーシュは見た
これが自分の言った、そして進むべき修羅の道というのだろうか
何故、関係のない平和な世界で微笑んでいた少女がギアスに翻弄されそして死んでいかなければならなかったのか
は涙がいっぱい溜まった瞳で、ルルーシュを見上げた
「ルルーシュっ、」
彼も辛かったのだ、とは今更ながらに理解して彼の高い位置にある頭をぎゅう、と抱き締めた
精一杯背伸びしてさらさらの黒髪に顔を埋める、ルルーシュは上体を屈めて彼女の抱擁を受けた
鼻先に感じるの香りに、ルルーシュはちいさく、ちいさく、涙を零した