「ほわー、ルルーシュもここまでやるとはねえー」

は感心したように、誰にも聞こえないような声で呟いた
目の前にはクロヴィスの御料車を装った、お世辞にも綺麗とはいえない車が一台あった
よくもまあこんな短時間で作ったと、は物色するような目で車を見る

「おい、お前は誰なんだ」

そんな時、に向かって鋭い声が届けられる
がゆっくりとそちらを見ると、レジスタンスのメンバーであるカレンがこちらを睨みつけていた
面を付けているは、もう一度面をしっかり付け直すとまた車に視線を戻す

「おい!聞いているのか!?」
「聞いてますよ、そんなに大声を出さないで」
「お前!」

はひょうひょうとカレンに言うと、壁に背を預けるのをやめてちゃんとカレンに向き直った

「私は、まあゼロに仕える者とでも覚えといて」
「ゼロ…あいつの部下か!?」
「部下って言うか…駒?」

が首を軽く捻った時、上からゼロ−−もといルルーシュの声が聞こえた
先ほど、電車から出てきたルルーシュに口止めされたは、ルルーシュと思わず呼ぼうとしたのを寸でで止めた

(それにしても、ゼロって何さ…)

ゼロに車に乗るように指示されたとカレンは素直に車内に入った
運転席に座ったカレンは、さっきと打って変わり顔色が真っ青になる
体も時々小刻みに震えている
はそんなカレンの様子を見て、そっと彼女の肩に触れた

「大丈夫、恐れないで」
「…っ!」

いきなり触れられたカレンは一瞬息を詰まらせる
それでもは、カレンを落ち着かせるための言葉を必死に考え口にした

「ゼロを信じて」
「し、信じろって…こんな状況で…」

それはそうだ
この場には、クロヴィス殺害容疑の枢木スザクが運ばれるために、何百人ものブリタニア人や報道メディアが集まり
しかも目の前にはサザーランドが何台も用意されていたのだ
今までないほど注目されているカレンは、その瞳にはもう恐怖しか映していなかった
その時、機械か何かで大きくされた無機質な声が二人の耳に届く

「出て来い!殿下の御料車を汚す不届き者が!」

停止した車内ではタイミングを見計らって、片手を僅か頭上に持っていった
カレンはただ恐怖に震え、の起こしたアクションには気が付かなかった
そして車上ではの出した炎が丁度いい大きさまで燃え盛り、ゼロを覆い隠す幕を一瞬で燃やし尽くした
そして地を這うような低い声がその場全体に響き渡る

「私は、―――ゼロ」

周囲の者、報道メディアの物、そしてブリタニア軍の者、全てが驚きの色に染まった
カレンは更に恐怖し、がちがちと歯を鳴らし始める
はそっとカレンの背中を撫でると、僅かに意識を人差し指に込めると彼女の額にあてた

「大丈夫だから、前を見て」

透き通るような声で言い聞かされたカレンはばっとの方を見た
するとは「おまじない」と言って顔は見えないが、ふふっと笑った

「もういいだろう、ゼロ!君のショータイムはお仕舞いだ!」

その時また、機械を通したような無機質な声が響いた
そしてバンと銃声が聞こえたかと思うと、上空で待機していたナイトメアが次々と地上へと降りてきた
周りに4機、前方に3機のナイトメアがそれぞれ銃口を向けてくる
カレンはいくらか落ち着いたようだったが、また恐怖に支配されていった

「さぁ、まずはその仮面を外してもらおうか」

始まる、始まる 反逆という名の復讐が