さて、ルルーシュがジェレミアの無線のあとに出て行ってしまえばはC.Cと部屋に留守番だ
C.Cは先ほどからびくびくとソファーの後ろに隠れてしまっているだけで、は些かつまらなそうに唇を尖らせて怯える少女を見た
あの気品高い鋭い瞳もない、唇から漏れる罵声もない、これは、彼女は、C.Cではないのか
不思議な感覚だった
「C.C、こっち来て、お話しよ?」
「…は、はい」
こっちに来い、という命令にC.Cは従ったまでである
「C.Cは、何も覚えてないんだよね」
「…、」
それが、寂しかった
彼女には聞きたいこともたくさんあった、だけどそれ以上に、寂しい
しばらくルルーシュがそうしてくれるようにはC.Cの柔らかい手を弱く握った
「…分かった、私はインドとギニア代表と会った後、会場で合流する」
戻ってきたかと思えばその手にピザを持つルルーシュは忙しそうに端末を握っている
もぐもぐとC.Cと揃ってピザを食べるは上目でルルーシュを見ると心配そうに眉を寄せた
これから始まる合衆国憲章批准の式典、は残念ながらゼロの命により欠席だ
いつ何時、またシュナイゼルが画面越しにを確認してあれを使うか分からない
C.Cの言葉に小さく笑みを浮かべていってきます、と告げたルルーシュはそのままドアを抜けた
「待って」
思わずルルーシュのあとを追ったはぎゅう、と手を握り締めて彼を見上げる
無機質な仮面、その奥に潜む悲壮
は全部知ってる、そしてこれから行われる式典で変わっていく世界も知ってる
だから、少し、心配だった
「何をそんなに心配してる、ただの式典だ」
「うん」
「お前は部屋からC.Cとともに出るなよ?」
「…うん」
の表情は晴れない
ルルーシュは廊下に誰も居ないことを確認すると、(尤もほとんどの人間は控え室にいるが)仮面を外し、そっとの頬に触れる
そうして触れるだけのくちづけをすると優しく優しく微笑んだ
「いってきます」
そのまま仮面を被ろうとするルルーシュに、は思わず彼の白い頬を両手で掴んだ
急なことにルルーシュは何をすることも出来ないまま、のほうへ倒れこむように体制を崩す
目の前にはの顔、唇には温かいそれ
「んっ、」
両手で頬を包み込まれたまま、は精一杯背伸びをしてルルーシュにキスをした
顔が離れていく頃には、は顔は真っ赤に染まっていて、
「…いってらっしゃい」
はにかみながら微笑んだに、ルルーシュは胸の奥でむず痒くなるような錯覚に襲われる
彼女は自分を守ってくれると言ってくれた、でも何より、自分は彼女自身を、守ってやりたい
ルルーシュはそう思ってから、微笑んだ
「最後に、合衆国憲章第十七条、合衆国憲章を批准した国家は固有の軍事力を永久に放棄する」
神楽那のとした声がモニターからでも響いてくる
些かまだ怯えるC.Cの隣では食い入るようにモニターを見つめた
合衆国憲章に批准した国は合衆国日本、合衆国中華を中心にして47カ国
EUはこれによって弱体化し、事実上世界はブリタニア帝国と超合集国に二分化された
これで、世界のあり方は変わってゆく
ブリタニア帝国が、あるいは超合集国が、どちらかが、世界を握る
「この上で各合衆国の安全保障についてはどの国家にも属さない戦闘集団、黒の騎士団と契約します」
これこそが、黒の騎士団のあり方である
どの国にも属さず、契約を結んだ上での安全保障、これは最早テロでもなんでもない
「それでは、私から最初の動議を」
振り返る神楽那の髪が美しく靡く
「我が合衆国日本の国土が他国により蹂躙され、不当な占領を受け続けています、
黒の騎士団の派遣を要請したいと思いますが、賛成の方は、ご起立を!」
一斉に立ち上がる各合衆国の代表達、が小さく微笑んだ
「賛成多数、よって超合集国決議第壱號として、黒の騎士団に日本解放を要請します!」
「いいでしょう、超合集国決議第壱號、進攻目標は、」
ゼロの長い指が、それを指した
「日本!!」
世界の明日は、変わる
『ゼロよ』
しかしモニターに映ったのは、誰もが予想し得ない人物
今は消息不明となった、ブリタニア第98代皇帝、シャルル・ジ・ブリタニアであった
『ゼロよ、それでわしを出し抜いたつもりか』
が思わず立ち上がる
皇帝はCの世界に閉じ込められたはず、何故、今、ここに
思わず隣のC.Cを見ても困惑しているだけで勿論何も覚えていない彼女に問い詰めることはできない
は無意識に、少年の名前を呼んでいた
『だが、悪くない、三極のひとつのEUは既に死に絶え、つまり貴様の作った小ざかしい憲章が世界をブリタニアと、
そうでないもの二色分けする、単純それゆえに、明解、今日、この戦いを制したものが
世界を手に入れるということ、いいだろうゼロ、挑んでくるがよい』
威厳のある声音、見るものを圧倒する射抜くような瞳、
これが現ブリタニア皇帝の、全てだ
『全てを手に入れるか、全てを失うか、戦いとは元来そういうものだ』
オールハイルブリタニア!
そう力強く叫んだ皇帝に続けるブリタニア軍人
それに相反する日本人の叫び、
戦いとは、こういうものだ、皇帝の言葉が蘇る