「さぁ、まずはその仮面を外してもらおうか」

びぃんと響き渡る声
カレンは恐怖でいっぱいのようで、また震えだしていた
ゼロ――ルルーシュ直前で従おうとしていた動作をやめ、パチンと指を鳴らした
はそれが耳に入ると、右上にあるボタンを軽く押す
すると次の瞬間、あの"毒ガス"といわれている装置が姿を見せた

(そういえば、あの装置みたいのなんなんだろ)

何も知らされていないは、ハテナマークを浮かべながらもルルーシュの様子を見る
ジェレミアはそれでも尚、焦りながらであったが銃口をゼロに向けた
しかしルルーシュは動じる事もなく、口を開く

「撃ってみろ、分かるはずだ お前になら」

全てを見透かし、否、計算しつくした彼の声はその場に響いた

「分かった、要求は」
(成功したな…これは)
「こいつと枢木スザクを交換だ」
「笑止、コイツはクロヴィス殿下を殺めた大逆の従!引き渡せるわけがない!!」

それを聞いたは面白そうに頬を緩ませる

「違うな、間違っているぞジェレミア 犯人はソイツじゃあない」

その場の者全員がゼロに引き寄せられたようだった
はこの物語の結末が分かっているので、とりあえずカレンを落ち着かせようと努力していた
そして次にゼロが口にした言葉は信じられないものであった


「クロヴィスを殺したのは――――この私だ!!」


一瞬、時間が止まったかのように思えた次の瞬間、幾万という声がざわめく
カレンもさすがに驚いたように動揺した
こんな事態だというのに、は興味なさげな態度でフロントガラスから見える、ゼロとジェレミアの対立を眺めている
そしてゼロが何を言ったのか知らないが、いきなり敵のナイトメアがこちらに銃口を向けた

「良いのか?公表するぞ?    "オレンジ"を」

コンコンという音を聞き、カレンは車を発信させた
周りの者はみなオレンジ、とルルーシュの出任せな嘘を間に受けていた
もちろんそれは、ジェレミアもブリタニア兵も同様だった

「私が死んだら公表されることになっている そうされたくなければ…」
「何の事だ、何を…!」

声、態度、誰が見ても分かるくらい彼はもう焦燥で支配されていた
そんなジェレミアを少しばかり可哀想だと思いながらも、はにっと笑う

そして王の力が下される


「私達を全力で見逃せ…!そっちの男もだ!」


ああ、またあの感じがする…とは一瞬だけ目をぎゅっと瞑った
しかしそれはほんのわずかな時間で、次の瞬間にはジェレミアの声が耳に届いていた

「…フン、分かった その男をくれてやれ!」
「…!ジェレミア卿!今なんと!」

ヴィレッタは信じられないとでもいうような声をあげる
それでもそんな声も王の力の前で意味を成さない

「その男をくれてやれ!!」




受け渡しの時、
ルルーシュは仮面で顔が完全に見えないし、も狐の面をつけているから顔は見えない
カレンもサングラスをかけているから、顔はよく分からないだろう
ルルーシュはこつこつと音をたてて、スザクに近づいていく
そして、双方が真正面に立ったときだった
今まで押し黙っていたヴィレッタがいきなり動き出したのだ

「クソッ!テロリストめっ…!」

その素早さにジェレミアは反応できず、ヴィレッタが撃った弾はもろにルルーシュとスザクに向かっていく

「…っ!余計なことを…」

は風の如く、ルルーシュとスザクの前に立つとばっと腕を振り上げて叫んだ

「邪魔をするな!」

の声が響くと銃弾はぶくぶくと泡を立て弾け飛ぶ
周りの者はおろか、ルルーシュ自身もその出来事に驚いていたが、すぐに体制を立て直した

「…ちっ!」

ルルーシュは大きく舌打ちすると、スイッチを押した
すると周りには紫の煙が立ち込める
ルルーシュは手足が自由ではないスザクを抱え、カレンはの腕を引っ張り足早に其処を去る
しかし口元をにやりと歪めたは懐から手榴弾のようなものを取り出し、それを後方に投げ捨てる

「さよなら」

呟くような声音のあと、ぱちぱちと電気回路の破裂する音が響く
そうして次々に爆発するナイトメア
ブリタニア軍人が誰もが目を見張る中、ゼロを含めた4人は既に其処にはいなかった