「え」

とルルーシュは我が目を疑った
そう、教室の前の方で担任の隣にいるのは紛れもなく枢木スザクだった

「今日付けで転校してきました枢木スザクです、よろしくお願いします」

一気に教室内が騒がしくなる
ルルーシュはとにかく驚きが隠せないようだった
はというと、このクラス転入生多くない?と疑問を飛ばしていた




終業の時間、スザクはみなの冷たい視線と聞こえる声に囲まれていた
で、自分も転入したばかりでまだ話せる友達といったらカレンぐらいしかいない
そんなカレンも別な友達のところにいて、も一人で教科書を鞄に詰めていた

「話してみればいい人かもしれないよ」

そんなかわいらしい女の子の声が耳に入る
そちらに目をやると、あの茶色の髪の女の子がスザクに近寄っていこうとしていた
しかし、ルルーシュ曰くルヴァルという人がそれをとめた
は眉を軽くしかめてから、鞄を手に持ち、スザクに近づいていく

スザクは周りの声を我慢するので精一杯なのか、目の前まで来ていたに気づかない
スザクの目の前で歩みを止めたを見て、クラスが一瞬静かになる
今まで聞こえていた声が急にやんで、スザクは少し不審に思い顔をあげた

「…えっと、」

目の前にはかわいらしい顔が自分を覗いている
スザクは困惑したような顔でを見た

「枢木、スザク君だよね?」

さっき自己紹介したのに、はあえてスザクの名前を言った
スザクが「う、うん」とあいまいに頷くと、はにっこり微笑んでみせる
そしてスザクの前の席のイスに座って、彼と話す体制を作った

「あのね、あたしも昨日転入してきたの 転入生同士、よろしくね」

なにが転入生同士か、とスザクは内心苦笑いするが、自分に話しかけてくれたに嬉しさをあらわにした

「君も、昨日?」
「そ、ちなみにあたしはブリタニア人じゃないんだ」
「え?」

思ってもみないの言葉にスザクは驚きの声をあげる
はそんなスザクの様子を楽しむかのように続けた

「お母さんが日本人なの」

今更になって久しぶりに聞いた言葉 日本人
イレブンでもなくて、名誉ブリタニア人でもなく 日本人と彼女は言った
スザクは自然とに心を開いていくように見えた

その時、ルルーシュがおもむろに席を立った
もスザクもその様子に一瞬気を取られたが、ルルーシュが自分達に近づいてくるのですぐに意識は戻される
スザクとしては、ルルーシュとここではなすのは気まずかった
しかしルルーシュはスザクの前にいたの腕を引っ張って、イスから立ち上がらせる

「さっき、先生が呼んでた 職員室分からないだろ?」
「うん、連れてってくれるの?」

ルルーシュはそのままを連れて教室のドアまで行った
教室を出る瞬間、ルルーシュは襟元を軽く動かす
スザクはそれを見て、少し驚いたような表情を見せた
は意味が分からなく、職員室とは反対の方へ行くルルーシュにただ引っ張られるだけだった




「先生呼んでたんじゃなかったの?」
「何故、スザクに近寄る」
「あんなの見てられないもん」

はぷいとそっぽを向いた
その時、屋上のドアが音をたてて開いた
ルルーシュの隣にいたはその瞬間、足音も立てずに物陰に潜んだ
何を隠れる必要があるのだと、肩を竦めるもスザクは笑みを見せて歩み寄った

「7年ぶりに使ったよ、このサイン」

振り返ったスザクは嬉しそうな表情でルルーシュを見ていた

「無事でよかったよ」

言いたかった言葉
スザクはかみ締めるように言った

「そうだねーって、それは君もでしょ?」

後ろから聞こえた聞き覚えのある声
ルルーシュは後ろを向いたスザク越しに見えるを見つけた
こつこつと近づいてくるに、スザクは目を白黒させていた

「な、なんで君が此処に?」
「うーん、成り行きかな?」

にっこりと微笑んだは思った以上にかわいらしく、スザクはその笑顔に見とれてしまった
ルルーシュは面白くなさそうにを自分の方に引き寄せる
そして少し強めな声色で口を開く

「戻っていていいぞ」
「どうして、ルルーシュが連れてきたんでしょー?」
「え、ルルーシュ この子知り合い?」

スザクはがルルーシュの知人らしいのに気づき、そう問いかけた
はルルーシュと顔を見合わせてから、再び微笑んだ

「ルルーシュの遠い親戚ってとこかな?」
「親戚…?あ、そうだ、あの子はどうなって?カプセルの…」
「ああ、戦闘のどさくさに紛れて離れ離れに…そっちこそ分かるんじゃないのか?」
「…いや、親衛隊以外知ってるものはいなくて…」
「カプセル…?」

カプセルのあの子、がC.Cだと知る由もないは当然疑問の声をあげる
その時、掴んでる腕から少しの力が加わったのに気づいたはそれ以上聞くのをやめた

「それより、名前 ルルーシュって呼んでも?」
「昔の俺は死んだ事になってる、ルルーシュ・ランペルージ 今はそう名乗っている」
「ああ、それで…って、この子知ってるの?!」

の前で自分が偽名を使っていると言い放ったルルーシュにスザクはいきなり慌てる
遠い親戚だといっても、彼が皇子だったことを知っているのは少ない
だからこそスザクはルルーシュの発言に驚いた

「ああ、彼女は知ってるから大丈夫だよ」
「知ってるって、ルルーシュが皇子のこと?」
「う、うん」

安心したようなスザクに、は掴まれている腕を振りほどいて彼に向き直る

「あたしは、さっき言った通りお母さんが日本人だからハーフなんだ」
?」
「うん、苗字で呼ばれるのは嫌いなんだ それからスザクって呼んでもいい?」

今や何処へ行っても非難される彼にとってのその言葉は胸を指すような嬉しさだった
スザクは大きく頷いて、よろしくと笑みを浮かべた