ルルーシュは、スザクが完全に見えなくなると、の腕を思い切り引っ張り自分の方に寄せる
は大して驚いたような顔をしないで、「何」と一言言って振り向いた

「スザクには余計なことをするな」
「余計なこと?おやすみっていうことが?」
「…俺の言う事を聞け」

やけに不機嫌だと気づいたは、ひとまず一回頷いて中に入った
リビングに戻ると、C.Cが二人を待っていた

「ふっ、お前もまだまだ餓鬼だな、ルルーシュ」
「…?」
「黙れ」

何のことを言ってるか分からないは、いきなり挑発的なC.Cを見て首を傾げる
しかしルルーシュは更に不機嫌オーラを出して、椅子にどかっと座る
そして頭をくしゃくしゃと掻くと、何かを思い出したようにを見た

それに気づいたは傾げた首をそのままにして、口を開く

「どうしたの」
「スザクは、俺に自分と他人のフリをしろと言った」
「他人のフリ…なんで?」
「俺達に迷惑を掛けたくないらしい」
「…優しいね」

ふっとは目線を下にする
ルルーシュはまた不機嫌オーラを発しようとするが、何か考え込んでいるを不審に思った
は伏せ目がちに再び口を開く

「でも、優しいだけじゃ 何も変えられない」

はそれだけ言うと、部屋を出て行った
残されたルルーシュはなんだか複雑そうな顔で、の出て行ったところを見つめている
そんなルルーシュに鎌をかけるように、C.Cは言った

「嫉妬か、ルルーシュ」
「…何故俺がにそんな感情を抱くんだ」
「誰が見てもそう思う なんだ、自分では気づけないのか」

頭に血が上ったようで、ルルーシュはがたっと席をたつと、自分も同じように部屋から出て行く
C.Cは面白そうな顔をして、後を着いていった











朝、あたしはルルーシュとは別行動で、一人で教室へと向かった
時々感じる視線が少し痛かったけれど、遠くに見つけた人物を見て一瞬ほっとする
近くまで行くと、この間のリヴァルって人とルルーシュはいた

あたしが近づくと、一度目線を交えたルルーシュは、「遅いな」と一言
リヴァル君はちょっと驚いた顔でこちらを見ていたけど、そんなの気にしないで口を開く

「迷っちゃうよ、本当此処は」
「そろそろ覚えろって」
「…あのさ」

その時、黙っていたリヴァル君が間に入ってあたしたちの会話を止めた
なんだろうと思って、あたしは自分より少し背の高いリヴァル君を見る

ちゃんってイレブン、じゃなくてハーフなんでしょ?」
「…うん」
「なのにルルーシュと親戚なの?」

痛いところを突かれたと思った
でも、ルルーシュは顔色一つ変えずに言い始める

「ああ、ま、親戚っていっても遠いからね」
「うん、あたしもルルーシュが親戚だなんて知らなかったもん」
「そうなんだ」

納得したような顔で頷くリヴァル君
しかし、先ほどのイレブン発言には少し頭にきた
もし仮にも本当にあたしがルルーシュの遠い親戚なら、今頃キレてしまっているだろう
ブリタニア人は本当にイレブンを差別しているらしい

「あ、あとさ もう一個聞いていい?」

リヴァル君の声で、はっと我に返ったあたしは彼を見て首を傾げる

「あの、枢木スザクとちゃんって知り合いなの?」
「………」
「…違うよ、初対面」

どうしてみんなスザクを嫌うんだろう
質問されて改めて思った
けどこれも仕方ない事なのかもしれない

「でもすっごい仲よさそうにしてなかった?」
「そう?」

感情を読み取られないように、笑顔を貼り付けて言ってみる
それでも、ルルーシュにバレてしまているのはあたしだって気付く
だけど今はそんなの気にしてられない

「お母さんがね、日本人だったから、ちょっと話してみたかったの」

そう言うと、リヴァル君はそっか、と少しテンションの下がった言い方をした
あたしは慌てて話題を変える

「あ、あとね って呼んでほしいな」
「え?」
「名前で呼ばれるのが好きなの それにあたしは"ちゃん"って感じじゃないし?」

リヴァル君の笑顔を、その時初めて見た気がした

「えと、リヴァル君?」
「リヴァルでいいって」

ルルーシュの方から真っ黒なオーラを感じたけど、とりあえず無視
あたしは最後に笑みを見せてから教室に入る
入った瞬間、教室内が静かになった気がしたけど、すぐに元に戻った
ほっと安息の息をついて席に着く

「おはよう」

聞こえた声に顔をあげてみると、そこには見慣れた顔があった

「あ、カレンおはよう」
「もう慣れた?」
「うーん、学校内はまだ迷うかな」

笑い合った時、少しだけ優しい気持ちになれた感じがした
しかし、その空気も一瞬で冷たいものに変わった
教室内もしんとして、聞こえるのは靴の音だけ
不思議に思ったあたしは体ごと後ろに向く

(スザク)

そこには気まずそうなスザクの姿
席に着いても、空気は同じだった
あたしはすぐ、席を立ってスザクに近づいた

「おはよう、スザク」

見上げた顔は、嬉しそうな、でも悲しそうな顔をしていた