授業が全て終わり、ルルーシュはを置いて、とっととクラブハウスに戻ってしまった
は唇を尖らせてルルーシュの後ろ姿を見送ると、教科書の入った重い鞄を持ってスザクの前まで歩み寄る
自分に影が覆いかぶさった事で、スザクは顔をあげた

?どしたの?」
「あのね、あたしまだよく授業の内容分からないからちょっと残るんだけど、一緒に残らない?」

少し遠慮がちに言うと、スザクは一瞬驚いたような表情をしてから、にっこりと微笑んだ

「いいよ、勿論 僕なんかでよかったら」
「そう?よかった」

かわいらしい笑みを零したは、早速スザクの隣の席を陣取った
もう教室内には人の姿はほとんどなく、は鞄を開いた頃には最後に残っていた生徒も教室を出ていった
ペンケースを出して、教科書とノートを取り出したは、ふっとスザクに顔を向ける

「あのさ、スザク」
「うん?」
「あのね、昨日ルルーシュに何て言ったの?」

真っ黒な大きな瞳は、しっかりとスザクを捉えていた
スザクは肩を竦めてから、口を開く

「聞いてたの?」
「ううん、」
「…僕のせいでもうルルーシュに迷惑は掛けられないから、僕たち他人のフリをすることにしたんだ」
「…」

少し目線を落としたは、しかしすぐにまたスザクを見据えた

「優しいんだね」
「…そんな事ないよ」
「ううん、スザクは優しいよ?」

微笑む少女に釣られてスザクも笑みを零した
そんな中突如響き渡る校内放送
声の主はアッシュフォード学園会長のミレイ・アッシュフォードだった

『こちら、生徒会長のミレイアッシュフォードです』
「あれ、これって生徒会長さんなんだ」
『猫だ!!』
「「猫?」」

いきなりの大声の放送に、もスザクも揃って首を傾げた

『校内を逃走中の猫を探しなさい!部活は一時中断!協力した部活には予算優遇します!』
「何、この放送?」
「さ、さぁ…?」

見つけた人には生徒会メンバーのキスがプレゼント、という放送に、外が一気に騒がしくなったのを
二人は感じた
しかし、やはりいい子なスザクはがたっと席を立った
はどうしたんだ、と呆れた感情を含みながらスザクを見上げた

「どしたのさ、スザク君」
「生徒会長さんが探せって言ってるし僕たちも探そうよ」
「キスのプレゼント欲しいの?」
「ち、違くて!!」

慌てだすスザクに、軽く笑ってみせたは仕方ないが、ゆっくりと席を立ち教科書を閉じた

「おっけー行こっか」












「あ、あれじゃない?」

校舎の屋根を軽々走っている猫を見つけたは、スザクとともにその建物の中に入ろうと入り口まで急いだ
その時、反対側から見知った人影を見つけたは名前を呼ぼうとしたが、相手の方が一足早かった

「スザク、!!」
「ルルーシュ!?君も猫を?」

やけに肩を上下させているルルーシュは、驚いた顔で二人を交互に見た
は自分を置いて帰ってしまったルルーシュに、少しだけ不服そうな表情を向けた
しかしその時、ちょうど上から猫の鳴き声が降ってきた

「上か…」

ほぼ3人同時に上を向いてから、一番早く動き出したスザクにルルーシュは声を掛ける

「待て、スザク!!お前は帰れ!!」
「でも、生徒会長さんが捕まえろって!」

物凄い速さで階段を駆け上っていくスザクに、ルルーシュはなんとか追いつこうと足を動かす
は、余裕の表情でルルーシュの横について走る

「いいから、帰れ!猫は俺が!!」
「身体を動かすのは僕の方が得意だよ!前に小鳥が逃げた時だって「古い話を持ち出すな!!」

全速力で走りながらも喋り続けるスザクとは裏腹に、ルルーシュは疲れきっている様子だった
そしてついにスザクはルルーシュを完璧に引き離して、先を急いだ
ルルーシュは手すりに助けられながらも、後を追いかける
は不思議そうな顔をして小声で話しかけた

「何をそんなに必死になってるの、ルルーシュは」
「あの猫がゼロの仮面を被っているんだ!」
「は?」
「だから、なん、としても、スザクより先に猫を捕まえなければ…!」

は一瞬考えるような仕草のあと、「あたしに任せて」と言い残し、手すりに立った

「スザクー?運動神経いいらしねー?でもあたしに勝てるかな?」

上を見上げて言い放ったは、スカートだと言うのに、手すりを駆け上がってスザクの横まであっという間に追いついた

?!」
「ふふ、運動では負けたことないんだよねー」

そういうと、はまた手すりを駆け上りそして小さな窓を開けた
建物の下には既に多くのギャラリーが目に入った
しかしはそんなの気にも留めないで、屋根をまるで地面を歩くように駆け上った
そして猫を見つけると、ゼロの仮面を外ししっかりと抱きかかえた

!!」

下を見ると、スザクとルルーシュがちょうど屋根に上ってきた頃だった
は猫を見せると、にっこりと微笑んで見せた
ルルーシュは安心したように、息をついた
しかし安心したせいか、力が抜けてしまったようでルルーシュは屋根から滑り落ちていく

「うわっ」
「ルルーシュ!!」

スザクは素早く屋根を滑ると、ルルーシュに手を差し伸べた
スザクはしっかりとルルーシュの腕を握ると、下からは歓声が聞こえた
は猫を抱きかかえながらも、ルルーシュの元まで自分も滑っていった

「大丈夫ー?まったく死んじゃうよ」

明るく振舞いながら、もルルーシュに手を差し伸べる
二人の手をとって、ルルーシュはなんとか上に引き上げられた

「安心しすぎだよ」
「なんか、気が抜けちゃって…」
「ふふ、危なっかしいな」

下では、ミレイが感心したように腕を組んでいた
ナナリーは何があったのかと、そわそわと慌てているようにも見える

「何があったんですか?」
「ルルーシュのピンチを転校生2人が救ったのよ」

その言葉の後、ナナリーは安心したように微笑んだ