「すげーテレビまでついてるよ」
南はそう言って、机に置いてあったリモコンでテレビの電源をつけた
ルルーシュは、それぞれがこのトレーラに歓声をあげている最中、を連れてこなかったのを少々後悔していた
はルルーシュの計画に携わっているし、何よりスザクを救出した時に一緒にいた人物だ
今日、レジスタンスのメンバーが集まったのだから、の存在も紹介しておけばよかったと思っていたのだ
しかしシャーリー達と一緒に出掛けてしまったのなら仕方ない
何しろ、がルルーシュ以外の人と出掛けるのは初めてだからだ
そんなの時、テレビから少し慌てた様子のアナウンサーの声がルルーシュの耳に入った
『現場はどうなっているんですか?』
「…何?」
『はい、こちら河口湖のコンベンションセンター前です、ホテルジャックは、日本解放戦線を名乗って…』
アナウンサーの声に、答えるように各々思ったことを口にしている
みな、少しの混乱が生じたようだった
『これが、犯人から送られてきた映像です』
その声のあとに続いて流される映像に、カレンは「生徒会の…」と呟いた
映像の端の方に、カレンの知っている生徒会メンバーの姿が見えたのだ
そんなカレンの声を聞き、ルルーシュもテレビに視線を移す
「なっ」
ルルーシュが移した瞬間、映像には見慣れた茶色の髪の少女が見えた
それには、ルルーシュだけではなく、カレンも驚いていた
「な、!?」
「なんだ、カレン知り合いか」
「し、知り合いっていうか…その、」
の存在はレジスタンスには秘密、と彼女から言われていたので、カレンは言葉を濁す
ルルーシュは、仮面は被っているが、その素顔は焦りしかなかった
「(なんでこんな日に限って…!)」
小さく舌打ちしたルルーシュだった
*
「日本解放戦線の草壁である」
は目の前で日本刀を持っている偉そうな草壁と名乗る人物を、ぎろりと睨んだ
「(…なんでこんな日に限って)」
隣で怯えているニーナとは裏腹に、はルルーシュとまったく同じ事を考えていた
「(せっかくみんなと出掛けられる日だったのに…でもみんないるから、下手に手は出せないしなぁ)」
ぼけっと、そんな事を考えていると、何やら難しい言葉を言っている草壁に怯えているのか、
ニーナがミレイにしがみついていた
隣では、シャーリーも不安そうな顔で俯いている
はそっとシャーリーの肩に触れた
「大丈夫」
「……、ごめん、あたしが誘っちゃったばっかりに…」
「何言ってるの、あたしすごい嬉しかったよ」
いつもの明るさがないシャーリーに、は、柔らかく微笑む
「おい、お前こちらへ来い」
低い日本兵の声がその部屋に響く
声を掛けられた男性は、不安と恐怖を混じり合わせたような表情で立ち上がった
そしてそのまま部屋を出て、何処かへ連れて行かれてしまった
「(なんでだろう、あの人、交渉にでも使うのかな…でも明らかに一般人ぽいし…)」
はその男性の出て行ったところを暫く見つめ、色々なことに思考を張り巡らせていた
尚も、横ではニーナが震えて、シャーリーは俯いている
そんな時、さきほどとは違う日本兵が、草壁に小さく耳打ちした
「…ところに…が…」
あまりに小さなその耳打ちは、やはりからの距離では聞き取れなかった
草壁は、目を見開くと「ゼロか…」と小さく呟いたのを、は聞逃さなかった
「(ゼロ…、ルルーシュ?来てるの?)」
が眉を顰めている間にも、草壁は数人の日本兵を連れて、何処か他の部屋へ行ってしまった
草壁が消えたというのに、隣で怯えているニーナの小さな悲鳴は増すばかりだった
そして見張りだと思われる日本兵がちょうどニーナの前に来た時
「…っ!い、イレブン…」
あまりの恐怖からか、ニーナは思わずそう口にしてしまった
勿論、日本兵はその言葉に過剰に反応し、大きな声をあげる
「!今何と言った!!イレブンだと!?我々は日本人だ!」
「判ってるわよ!だからやめて!」
必死に自分に抱きつくニーナを抱えながら、ミレイも負けじと大きな声をあげる
「訂正しろ!我々はイレブンではない!」
「訂正するから!」
「なんだ、その口の利き方は!」
シャーリーの放った言葉に、日本兵は益々怒りを露にしていく
はそれでも肩の震えているシャーリーを庇うように、少し前に出る
「訂正するって言ってるでしょ?大きな声を出すのはやめて」
冷静に、しかし怒りの篭っているの言葉に、日本兵はついに手をあげた
「貴様っ!たかが学生のくせに生意気だっ!!」
銃を持ってた手とは反対の手を、に向かって振り下ろす
しかし次の瞬間、聞こえた乾いた音はのものではなかった
バシッ!
「っ!貴様っ!何をする!!」
の白い手は、その日本兵の手を叩き落していた
日本兵は、赤くなった手を握りながらに叫ぶ
「触るな」
今まで聞いたことのないような、の低い声にシャーリーもミレイも驚くだけだった
「ふざけるなっ!」
日本兵は再び手をに向かって、先ほどより威力を増して振り下ろした
しかしはその手を右手でしっかりと受け止めると、そのまま日本兵の腕ごと反対に捻りあげた
「っぐぁぁ!!」
おかしな方向に向いているその腕を押さえながら、日本兵は床に崩れる
声を聞いて他の日本兵がその場にぞろぞろとやってきた
ニーナは恐怖で涙が目じりに溜まっている
「貴様等来いっ!!」
の死角で、他の日本兵がニーナの腕を引っ張って立ち上がらせていた
それを見て、は小さくため息を吐くと、今度は左手でその日本兵の腕を掴もうとした
しかし聞こえた声で、それを止める
「おやめなさいっ!!」
後ろに振り返ると、ピンク色の髪が見えた