場所は変わってルルーシュの住まうクラブハウスの一室、
つまりはルルーシュの自室だ
は床にちょこんと座り込むと忙しなく首を動かして部屋の様子を観察していた

「で、結局俺にどうしろと」
「あ、はい、別に何も干渉しなくて大丈夫です、ただ身を隠す場所がほしいんです」
「場所…?」

つまりこのクラブハウスの何処かを貸し与えろと、
なんとも大胆なことを口走る女だとルルーシュは思った
だがそれよりもこの女は結構、いや充分戦力になるのではないかとルルーシュは思案していた
勿論、ブリタニアへの反勢力としてだ、

「このクラブハウスは仮にも俺のものではないんだがな…」
「お願いしますっ」
「…」

と、は弾かれたように顔を上げた
何事かとその真っ黒な瞳を見ればは恐ろしいものを見たかのような表情を浮かべていた
ルルーシュは眉を顰めての言葉を待った

「…何だ」
「あ、…あの、ひ、左目」

瞬間、ルルーシュは全身の細胞が収縮したのかと思われる焦燥を感じた
左目、つまり、―ギアス
はゆっくり口を開いた

「…あ、たし…とおなじ…」
「…何?」
「呪い…」

は呟くと目をそらした
まさか、ギアスに気付くのだろうか
ルルーシュはの肩を強く掴んでその漆黒を覗き見た

「おい!どういうことだ!」
「…っ」
「俺の左目が、どうかしたのか」
「…ごめんなさっ、なんでも…っ」
「言え!」

強い口調で言えばは恐ろしげに唇を震わせた

「その目…、あたしと、同じの、感じるんです…」
「…同じ、だと?」

そう言ってが見たのは自分の刻印、そう、ルルーシュが眉を寄せたあれだ
は暫し視線を泳がせるとゆるゆるとルルーシュの異様の左目を見た

「普通のものじゃない…、同じ、呪いみたいな…、この左目は、何なんですか…」

の肩を掴む手に無意識に力が篭り、少女は痛みから僅かに表情を歪ませる
それすら気付かずにルルーシュはを追い詰める
まさか、そんな、ありえない、何故ギアスに気付いたのだ、

「…お前、何を知っている」
「何も知りませんっ…ただ、その左目を、不思議に思って」
「…ふっ」

踏ん切りがついてしまった
戦争を経験し、自らも異型の力を持つ少女
そして自分だけを頼りにする少女に、ルルーシュは嘲笑った

「教えてやろう、それから場所も与えてやる、だがお前は俺の命令を聞くんだ」
「…命令?」

拒めばギアスで強制的にでも従わせるつもりだった
ルルーシュは鋭い眼光でを見下ろした

「お前は俺の駒となれ」
「…、駒」
「そうだ、お前は、戦うんだ」

降りかかるその言葉には何を思うのか
ルルーシュは暫しの反応を見てから左目に意識を集中させた
だがから反論の言葉はなかった
ただ表情もなしに頷くと、もう一度ルルーシュを見上げる

「あたしは、多分戦うために生まれた…だから拒みません、それで匿ってくれるというならば」

言い聞かせるような口調だった
正直驚いたのはルルーシュの方であった
こうもあっさりと頷くとは思わなかったのだ
しかし先ほどの言葉を聞いていれば彼女が普通の人間ではないことぐらい察しが付く

「でも、イコール貴方もただの善良な市民、というわけではないんですね」

その問いにルルーシュはふわりと笑ってみせた
そう、自分はこの腐ったブリタニアに反旗を翻す記号となるのだ

「ああ、そうだ、教えてやるよ」

物語は始まる、是も非も無く、ただ淡々と