ぐらりと視界が揺れる
それは多分、このタワーに攻撃を仕掛けてきた者がいるのを知らせているようで

「…来たかな」

はぽつりと小さく呟く
その呟きは、ゼロの耳に届く前に、周りの雑音でかき消されていってしまった




スザクは自分の攻撃により、段々と沈んでいくタワーを見つめながらまさか、と顔色を変える
案の定、一つの小さな窓からはゼロの姿が捉えられた
後ろには、例の狐の面の女も見える

「あ…」

その瞬間、スザクの口から漏れた言葉とほぼ同時に、目の前のタワーは所々から爆発していった
煙でタワー自体も見えなくなってきている

スザクは血の気を引くのを感じながら、一旦地上へ戻り、体制を取り直すとまだ小さな爆発の起きているタワーへ飛び込んでいった

「よせっ、枢木准尉!!」

機械越しに叫ぶロイドの声を無視し、スザクは自分の知人の無事を祈った


タワーの周りは段々と煙が晴れていく
ロイドとセシルは目を凝らしてランスロットの姿を探した

「スザク君!」

煙の中に、立ちすくむランスロットを見つけると、セシルは安堵の表情を見せる
ロイドは、はぁと息を吐いて椅子にもたれ掛かった
しかし、スザクはランスロットの中で、自分の無力さに唇を噛んでいた

「…救えなかった…僕は、僕は…」

拳を握っても時間は撒き戻せない

「またっ!!」

ドンと、自分の拳を打ちつけたスザクはそのまま顔を俯かせる
―何のために軍に入ったんだ
みんなも守れずに…

スザクはただ自問自答を繰り返していた




その時、煙の中から何台もの救助用の船が姿を見せる
そこにはモニターに映し出されていた人質の姿が見られた
そして一番後ろから来る、大きな船からはゼロの声が響いた

「ブリタニア人よ、動じることはない ホテルに囚われていた人質は全員救出した、あなた方の下へお返ししよう」

再びモニターに人質の姿が映し出される
そこには困惑したような顔のシャーリーや、今だミレイに抱きついたままのニーナも見られた

「…みんな!」

スザクはランスロットの中でモニターに映し出された知人に、涙を浮かべた

しかしまだゼロの近くにいる人質は、彼に手を出したら
再び囚われの身になるということをコーネリアは分かっていた
ゼロは仮面越しにそっと笑みを作る


バッとスポットライトがゼロのいる船に当てられる
そこには黒の服に身を包み、顔を隠している日本人―つまりテロリストがいた
しかし一人違う服装で、狐の面をしている女は、ゼロの横で腰に差している刀の柄に手を掛けていた
まるでその姿は、民衆を嘲笑うかのようにも見える


「人々よ、我等を恐れ、求めるがいい! 我等の名は――――黒の騎士団!」

再び世の中にどよめきが起こる

「我々黒の騎士団は、武器をもたない全ての者の見方である、イレブンだろうと、ブリタニア人であろうと」

スザクはそれを厳しい目で見つめる
ゼロを見上げる人質の中で、シャーリーも困惑した顔で彼を見つめた

「…撃っていいのは 撃たれる覚悟のある奴だけだ!!」

それはまるで、彼の覚悟のように固く
彼の覚悟のように真っ直ぐで

はそっと目を伏せる

「我々は、力あるものが力なきものを襲うとき、再び現れるだろう 例えその敵が、どれだけ大きな力を持っていたとしても」

カレンはその言葉を聞きながら、ぐっと目を瞑った
そしてゆっくりとあけ、小さな疑問を胸にする

(正義の…見方?)


「力あるものよ 我を恐れよ!」

―あの日みたいなことはもうさせない

「力なきものよ、我を求めよ!」

―…ナナリー

「世界は我々黒の騎士団が」


世界は 変えられる


「裁く!!」