「黒の騎士団っ!!」
叫びながら立ち上がるカレンに、教室は一瞬静まり返った
そして少しの間の後、盛大な笑い声が聞こえる
「か、カレン…?」
隣で眠そうに授業を受けていたは、その声でばっちり目を覚まし、目を丸くしてカレンを見上げていた
「珍しいね、カレンが居眠りなんて」
「そうそう、隣でいつも爆睡のと違って」
「…リヴァル君?」
真っ黒な笑みではばきりと拳を鳴らした
リヴァルは慌てて「ごめんって」と手を顔の前で振った
「う、うん…ちょっとね…」
そう言うカレンは若干、恥ずかしそうな顔をしている
「ルルーシュに弟子入りしたら?アイツ居眠りは達人だから」
「え?」
とカレンの声が重なる
そして一気に4人の視線は窓の席にいるルルーシュへ
ルルーシュはいつものように、考えるようなポーズでいた
「寝てるの、アレ?」
カレンの言う通り、傍からみればどう考えても寝ているようには見えない
そういえば、毎回毎回授業中のルルーシュはあんな感じだ
は自分より授業に集中してないんじゃないか、と帰ったらルルーシュに言おうと心に誓った
「…?」
カレンは少し不思議そうに首を傾げた
*
「何、まだ眠いのカレンは」
隣を歩くにそう言われても、返す言葉もなく、代わりに出てくるのは大きな欠伸だけ
「そりゃそうよ、二重生活はさすがにきついわ…」
「ふふ、まあそうだよね」
小さく笑うに、カレンは首を傾げて口を開く
「はなんでそんな平気でいられるのよ」
「え?」
目を丸くするは、言葉さえ発しなければ女のカレンでも可愛く見えただろう
しかし次にカレンに発せられる言葉を聞いて、彼女からそんな気はたやすく消えた
「ちゃんと寝坊してるし」
ちゃんとの使い方が違う気がする、とカレンはそっと思った
思えばはいつもいつもHRの始まる直前に教室に駆け込んでくる
だがそれだけで、そんなに元気でいられるものか、とカレンは再度首を捻る
「まぁ、あれだよね、あたしカレンとは違って毎回授業は寝てるし そこで体力回復よ」
言いながら生徒会室に入っていく
しかし部屋内に入った瞬間、の声が途切れる
カレンは不審に思い、ひょこっと部屋の中を覗いた
「おっはよーにゃん」
「おは、ようございます…」
猫の格好をしたミレイは陽気にドアの目の前で突っ立っているとカレンに声を掛けた
少々驚いているカレンとは反対に、は目を輝かせてミレイ達を見つめる
「え、え、何?何やってるの!?」
「あれ、聞いてなかったっけ?アーサーの歓迎会」
後ろでアーサーが情けなく欠伸をしている
つい先ほどカレンを思い出させる猫だ
「それでなんでみんなそんな格好して…」
「そりゃあ、アーサーの歓迎会よ?ちゃんと猫の格好しなきゃねえ」
おもしろそうに頬を緩ませるミレイは、いかにも楽しそうだ
「カレンとの分もあるからね」
「えっ、私も?」
「あたしも着替えるの?」
そう言うに、ミレイは思い切り飛びついた
はなんとか倒れこむのを防いだ
「にはちゃあぁんと、選んであるからあっちで着替えておいで」
「へ?あ、うわっ」
言いながら布の塊を渡し、ミレイはを隣の資料室にを押し込んだ
資料室も今はただの更衣室と化している
は首を傾げながら、しかし好奇心に勝てないのか、わくわくした面持ちで制服を脱いだ
「死にゃばもろともってこと」
「ひっでーなあ」
そんな声が聞こえた矢先、生徒会室の端から少し遠慮の篭った声が聞こえた
「か、会長…」
「あら、着替えたの?こっちにおいでなされ♪」
「ちょ、無理ですよ会長…さすがにこれは…」
何故か涙目で顔だけドアから覗かす
そこにいた全員ハテナマークを飛ばしてを見つめた
ミレイはそんなを気にも留めないで、彼女を引っ張った
「どうだっ!男共っ!よーく見て堪能しなさいよ」
ミレイの声とともにはルルーシュが座らせられている椅子の前に引っ張っられてきた
「きゃー、かわいいー!」
「本当、かわいい」
「…やめてよう、見ないで下さいー」
女子軍はの格好をみると、歓声の声をあげてきゃっきゃと喜ぶ
しかし男子軍はそうはしていられなかった
真っ白なの身体に反するような藍色の短いスカートを履いている彼女は、惜しみなく太ももをさらけ出している
そして小ぶりながら立派な胸も、大きく胸元が開かれているビキニ仕様の服に綺麗に収まっている
おまけに猫耳、猫の手、尻尾
目のやり場にこまるの服装は、かなり男子にはきつかったようで
「そこー視線そらしても無駄よ」
その時ばかりはミレイの声がぐさりと刺さる3人だった
はというと、恥じらいもあったようだが、シャーリーやカレンの言葉で吹っ切れたようでへらっと笑っていた
「…スザク?」
すると、いきなり動きがストップしてしまったスザクを心配して、は顔を覗きこんだ
スザクの翠の瞳には大きな涙の粒が溜まっていた
「へ…?」
「よかった…またみんなで集まれて本当によかった…」
そう言うと、スザクは目元に溜まった涙をごしごしと腕で拭った
は小さく彼の名前を呼び、優しく微笑む
そんなスザクを見て、リヴァルはルルーシュの上を飛び越えると、彼の腕をぐっと掴んでそのまま自分とともに後ろに引き倒した
「そこは笑うところだろー」
「ふみまへーん…」
リヴァルに頬を掴まれ、情けない声を出したスザク
その場は暖かい空気と、笑い声で埋まった
「なんか、こーゆーのいいよね…」
ぽつりと呟くように漏れたの言葉に、ミレイは小さく笑みを零し、シャーリーと顔を見合わせる
「あっは、とっととルルーシュのやっちゃおうよ」
にっこりと微笑んだは、シャーリーから塗装道具を貰うと妖しい笑みでルルーシュの前に立ちはだかる
「い、いや、がやることないだろう…?」
「ふふふ、あたしがかわいくしてあげるから」
語尾にハートが付きそうな勢いで、は更に笑みを深くした
ルルーシュの顔は心なしか青くなっていっている
「(…ルルーシュどんまい)」
そう心のなかで思ったのはスザクだけではない