「河口湖…?」

そう呟いて、は思い出したように顔をあげる

「あの時の…ユーフェミア様ですか?」

するとユフィは嬉しそうにはいっ、と返事をするとの手をぎゅっと握った

「よかった、私、もう一度あなたに逢いたくて…!」
「…え、?」

スザクは目の前の状況についていけず、ただ今心中にある最大の疑問を口にした

、ユーフェミア様と知り合い?」
「知り合いってわけじゃないんだけど…逢ったことがある、みたいな」
「この前の河口湖の事件の時に、彼女も一緒に人質にされていたのですよ」

は、そうかあの時の方かぁ、と呑気にぼやいていた
ユフィはに逢えた嬉しさか、ずっと手を握ったまま、スザクに笑顔で話している

「彼女、お友達を守って日本兵に抵抗をみせたんです、あんなに勇気のある方なんて…」

その瞬間、スザクの方から痛いほどの視線を感じた
そう、人質にされた、とは言ってあったが、まさかそんな危険なことをしたとは言っていないからだ
スザクはどういうことかな?なんて言いたそうな目でこちらを見ている

「あの後付き人の人に聞いたら、あなたもあの後日本兵の方に連れて行かれたと…」
「え!?」

スザクは信じられないといった声をあげる
は必死に作り笑顔のまま、えっと、そのですね、とか言葉を濁した

「いや、でも行く途中でなんか爆発が起こったっぽくって…そのごたごたに紛れて逃げてきました」

よく嘘八百を並べられたものだ、とは自分を褒めた
しかし相変わらずスザクの視線は痛い
ああ、この後スザクに色々言われるのかなぁ、なんてはそっと思った

「そう、私ずっと気になってて…何処かでお逢いできるのを待ってたんですよ」

言いながら向けられる眩しいほどの笑みに、も同じように微笑んで見せた

「そうだ、スザク 少しの間彼女借りてもいいかしら?」
「え?それは…えっといいと思いますけど」
「(スザク、今あたしのこと売った!)」

よかった、と言い再び笑みを向けられ、はえ?と思わず首を傾げる

、と言いましたね 少しの間私に付き合ってもらえませんか?」

目の前で皇女殿下がお願いしているのだ
しかも軍の中で
は断れるはずもなく、はい、とだけ返事を返す

「そう、それでは付いてきてください 一度ゆっくりお話がしたかったんです」
「はい」

言ってすぐ、ユフィはの腕を引っ張り特派から消えた
残されたスザクは、後でになんといおうか、と彼女の置いていった毛布を見ながら考えていた











「ユーフェミア様?一体何処へ…」
「ユフィでいいわ、
「え!?」

にっこりと音が付きそうなくらいの笑みで言われ、は言葉を詰まらせる

「私だってのこと呼び捨てですもの、もどうかユフィと呼んで?」
「…でも」
は、私のこと、皇女殿下の器でしか見ないのですか?」

そう言われ、はそんな、と声を大きくする

「なら、いいでしょう??」
「…はい」
「あ、あと敬語もなしにしましょう」
「えー!?」
「同じ事ですよ」
「…うん!」

そう言われると、何故か嬉しく感じるだった
しかしそれはユフィも同じことで

「ひとまず、座ってください」

そう言って進められるのは、目が眩むような豪華な椅子
椅子だけではない、周りのもの全てが豪華なものだった

「(ま、皇女殿下ともなれば、こんくらい当たり前なのかな)」

軽く部屋を見回したは、自分の正面に座る女性からの言葉を待った
だがいつまで経っても言葉は来ないままで、が口を開こうとした時だった

「あっ、やっぱりいきなり連れてくるの、いやでした?」
「えっ、そんなことないよ?」

柔らかく微笑んで見せれば、ユフィもふんわりと笑みを浮かべる

「私ね、あの時迷っていたの、」
「迷って?」
「そう、名乗って場を少しでも落ち着かせようと」

ユフィなりに考えたんだろう
今この場でも、現場にいるくらい眉をへの字にしているユフィがいた

「でもね、あんなにみたくお友達を守ろうと立ち向かうのはすごいことだと思うの」
「…そんな、あたしはただ」
「いいえ、だって私にはそんな勇気すらないもの…」

言ってユフィは、指を絡ませた
ユフィの瞳には、不安だとか、恐怖だとか、そういうのが湛えられていた
最初特派に来た時とは大違いだ

「そんなことないよ、ユフィ」
「え?」
「だって現にあの時ユフィは何人もの人を救ったんだよ?日本兵に捕まえられそうになったニーナも
ユフィが何も言わなかったら、もっと多くの人がビルから落とされていたかもしれない、そうでしょう?」

自信もってよ、お姫様、が言うと、ユフィは嬉しそうにありがとう、と言った

「あの、
「何?」
「私達、友達でしょうか?私はの友達になれるでしょうか」

そっとユフィを見ると、少し顔を紅くさせている
そんな彼女には自然と緩くなる頬に任せて口を開いた

「勿論だよ?あたしもユフィの友達になりたい」

そう言うと、ユフィは顔をぱっと明るくさせて、手をぎゅっと握った

「でも驚きだわ、スザクとが同じ学校だなんて…」
「あたしはそれよりスザクとユフィの関係の方が…って、まさかスザク入学させたのって…」
「私です」

にこりと笑みを向けられれば返す言葉もなく、ただは微笑み返した

「そっか、うん、まぁいいと思うよ」
「スザクは今学校ではどうなのですか?なにか、問題とか…」
「大丈夫だと思うよ、最近よく笑うし」

ユフィとセシルの考えが同じだったことに、スザクが大切にされているんだとは悟る

「そうですか、よかった」
「ふふ、よかったです」

真似して言ってみれば、一瞬の沈黙のあと聞こえる笑い声
その瞬間、部屋の外から聞き覚えのない、鋭い女性の声がした

「ユフィ?なんだ客がいるのか?」
「あっ、お姉さま!どうぞいらしてください」

え、と声を漏らしても遅い
ユフィはぱたぱたと扉までかけていくと、に振り向いて「お姉さまよ」と笑ってみせる
お姉さまって、お姉さまって、あたし此処にいていいの!?
ていうか、ユフィも呼ばないで!

そんなの心の声が届くはずも無く、しゅんという音と同時に扉が開く
扉の外には、迫力のある美人、という言葉が合うのだろうか
ユフィとはまた違った雰囲気の女性がそこにいた

「…客か?」
「お姉さま!彼女が前話をしました女性です!ね、

ね、と同意を求められても言い返す言葉がない
ユフィ曰くお姉さま(コーネリア)は、少しだけ納得した表情をした

「あ、あの ですっ」
「彼女は私の友人です」

にっこりと微笑むユフィを見て、コーネリアはさっきとは違う優しい表情をすると、に近づいた

「お前、随分と度胸があるみたいなんだな?」
「度胸って、…行き当たりばったりですけどね」

次の瞬間、コーネリアは小さく噴出した

「ははっ、面白い奴だ」
「へ?」
「よかったな、ユフィ」

コーネリアの言葉にええ、と頷いたユフィはの腕をやんわりととった