「これより我が黒の騎士団は、山頂よりブリタニア軍に対して奇襲を敢行する!」

ばたばたと足音が聞こえた
はそれでも其処から動かずに、眺めのよいところに立っていた

「作戦目的は、ブリタニア第二皇女コーネリアの確保にある、突入ルートを切り開くのは紅蓮弐式だ」

ゼロの声の後、ゆっくりと紅蓮弐式は3と書かれた貫通電力に手を添えた
カレンがふぅ、と息を吐いたのが分かる
そして鋭いカレンの声が響いた

「鎧袖伝達」

周りが紅く染まった
は少しだけ面白そうにそれを見つめている
しぃん、と静まり返る辺り
しかし次の瞬間、地震のような地響きが起こった

「成功だね、カレン」

は嬉しそうに面越しに笑みを浮かべた
その時、隣からいつもより落ち着いたゼロの声が聞こえた

「お前はどうするつもりだ」
「どうするって?別に?みんなの手助けをするよ」

ゼロの言葉に首を傾げるだが、次の言葉でその意味を理解する

「お前は唯一無頼に乗っていない、紅蓮弐式はもちろんだが、お前も私について…」

つまりは、の心配
それに加え、を近くに留めておきたいというゼロの願望だろう

はふっ、と笑った

「ゼロ、貴方の騎士は紅蓮弐式、カレンでしょう?あたしはバックアップでもしてるから」

しゅりん、と刀を抜き取ったは、一度大きくそれを振った

「勝利は貴方のものだよ」

その言葉の後、ゼロは笑みを浮かべた











「あっ、ちょっとセシル君!」

ロイドはぴぴ、と鳴った画面に大きな声をあげて食いついた
セシルはそんなロイドの椅子の後ろに行くと、なんですか?と声を掛けた

「ほら、黒の騎士団のあの子だよ、狐のお面の!」
「え、それがどうかしたんでしょうか?」
「どうもこうもじゃないよ!見てごらん!」

そう言って、指の先のディスプレイに視線を移すセシル
ディスプレイには、木々の間に漆黒のコートで身を隠すの少女が狐の面をつけて立っていた

話によると、スザクを助けたあの日の映像が頭から離れなかったロイドは、あの少女のデータが取りたい、と 随分と前に軍に頼み込んだそうだ
するとなんと今日、その少女を捕らえた映像が送られてきたのだ

「と、いうことは、彼女今日の戦線に出ているということですよね?」
「そうだね、黒の騎士団も動き出したって噂だし…」

ロイドとセシルが話している間にも、少女の周りはブリタニア軍のナイトメアで囲まれていく
セシルは眉を顰めるが、ロイドは少しだけ嬉しそうな顔をした

「彼女、どう出るかねぇ」
「あの、どうしたんですか?」

気になったスザクは、再び顔を覗かせる
特派には関係がない、と言われても気になるものはしょうがない
ロイドはディスプレイから目を離さずに口を開く

「君を助けた狐のお面の子いたでしょ?あの子今回の戦線に出てるんだよ」

スザクはえっ、と声をあげた
しかしその後、ロイドとセシルの声が重なる

「えっ…!」

ディスプレイの少女は、周りのナイトメアを見回した後、おもむろに右手に握られた刀を振り上げた
一瞬、青白く光った刀は、周りに爆風を巻き起こし、そして爆音が3人の耳に届いた
映像は其処で途切れた
それはそうだ、今の爆発に映像機器もろとも巻き込まれたからだ

「…なんなんだ、今のは」

ロイドが珍しく怪訝そうに眉を顰めている
その後に、慌てた声が特派に響いた

「ギルフォード第一軍、全滅!他、山頂を目指していた軍も全滅です!」

それは今の映像に映っていた軍のことだろう
さすがのロイドも目を見開いた

「どういうことだ…?」





「!!」

爆音がの耳に届く
はばっ、と土砂崩れの奥を見据える

「まさか…この作戦は完璧なはず…日本開放戦線だって、ゼロの協力してるって…」

先ほどの無線により、日本解放戦線が黒の騎士団の後方を叩いている事を知ったは眉を顰める
ブリタニア軍を、はるかに押しているはずの黒の騎士団だが、何故あんなところで爆発が起きるのだろうか

冷たい無線機は耳の横で沈黙を守っている

「…」

嫌な予感がの中で渦めく
は嫌な予感ほど、当たるものはないことを知っていた
大地を強く蹴り、木の先端に立ったは煙のたっている所をじっと睨む
土の壁と壁に挟まれた、一本通りの其処は灰色の煙をあげていた
あそこには紅蓮弐式がいるはず

「…ルルーシュ!!」

勿論、そこにはゼロもいるはずだ
冷たいものに指されたような感覚に襲われ、同時に不自然に冷たい汗が頬を滑る

「…っ!」

きぃん、と頭を貫く鈍い痛み
ギアスを発動させているときの感覚と似ている
しかしそれはルルーシュの危険を知らせているようにしか、には捉えられなかった

「…無事でいて!」

木が左右に大きく揺れたかと思うと、は大きく飛び上がった
そして物凄い速さでその煙があがっている場所を目指した