大きな歓声を耳に入れ、はそっと顔をあげた
黒の騎士団の無頼が数台と、周りに見慣れた服が何人もいる
日も傾き、攻撃をしなくなったブリタニアは負けを認めたということだろう
「…ルルーシュ」
ルルーシュとC.Cの気配が小さくなっているのをは気づいた
確実にいることは確かなのだが、どこかに隠れているのか気配が小さく、何処にいるかは分からなかった
「…っ!」
落ちてきた腰紐をあげようと、右腕を持ち上げた時だった
は右手に鈍い痛みを感じた
先ほどのランスロットの腕が当たった時だろう、あんな機械に殴られては痛みが伴うはずだ
「…はぁ、みっともない」
いつもなら一瞬で治癒できる傷だったが、今のにそんな力は残っておらず、ただずきずきと痛む右手を押さえるしかできなかった
「…ぁ、!」
がさり、と草陰から出ると、一番に気づいたカレンがに声を掛けた
はやんわりと笑みを浮かべる
「おめでとう、黒の騎士団が勝ったんだね」
「うん、…、その腕…?」
ぶらんと垂れ下がっている右手を見て、カレンは眉を顰める
は少しだけ苦笑いを浮かべて、あはは、と曖昧な答えを返した
「あはは、じゃないでしょ!?どうしたの?」
「ちょっとしくじっちゃって…でも全然平気だから」
と言っても、力も入らないし、絶えず痛みが襲ってくる
骨の一本でも折れているんではないだろうか、とは内心舌打ちした
「それよりゼロは?」
「あ、そうなの…まだ帰ってきてないし…、知らないの?」
心底心配そうな顔のカレンに、はゼロの存在感に感心した
そして首を横に振って、周りを見渡した
「どうしたんだろうね、」
「…っ、やっぱりあたし、探してくる」
言うが早く、カレンはばっ、と紅蓮弐式に飛び乗り、木々の間に消えていった
「あの、」
カレンの行った方をぼぅ、と見つめていると、ふいに声を掛けられた
はゆっくりと後ろを振り向くと、少し目線を泳がせている扇と目が合った
「なんでしょう?」
にこり、と笑みを浮かべると周りの団員の歓声が小さくなっていく
少し不思議そうにしているを前に、玉置が口を開いた
「その、ありがとうな、」
「え?」
「君、生身で本当によく活躍してくれてそうだね、今回の勝利は君のおかげでもあるんだ」
まさかそんなに感謝されているとは思わず、はぽかん、と口を開いた
「ゼロが帰ってきたらちゃんと報告しないとな」
小さく笑みを浮かべた扇に、も大きく頷く
ずきずきと痛み右手を無視し、は夕日を浴びた
*
「いった…っ」
持ち上げられた右腕が悲鳴をあげ、は思わず眉を顰める
C.Cは少しだけ困ったような顔をした
「なんとも言えないな、ちゃんとした医者に見てもらう方がいいだろう」
「え、ううん、大丈夫だよ?明日になればあたし自身だって回復してると思うし」
こんなの治すのちょちょいのちょいだから、とは終始笑みを絶やさずに言葉を続けた
しかしC.Cの顔は依然として晴れなかった
隣にいるルルーシュもだ
「お前、無茶するなよな」
「無茶?よく言う、ルルーシュとかC.Cの方が危なかったじゃん、あたしすごく心配して…」
しゅん、と項垂れるの頭を優しく撫でると、C.Cはおもむろに立ち上がった
は目線をC.Cに向けたまま、右腕をそっと撫でる
「今日はもう疲れた、私は寝るぞ」
そう言うと、さっさと部屋を出て行くC.C
笑顔でおやすみ、と手を振ったは彼女が完全に見えなくなると、さっとルルーシュに向き直った
「大丈夫だったの?」
「ああ、それよりお前こそ…」
「あたしは大丈夫ってゆってるでしょ?」
へへ、と笑みを零すは途端に表情を固くしたルルーシュに首を傾げた
「ルルーシュ…?」
はっ、と顔をあげたルルーシュは、悪い、と言って静かに席を立った
はそんなルルーシュをじ、と見つめてから、自分もがたりといきおいよく席を立ち上がる
ナナリーはもう寝てる時間だから、いつもなら静かなの言動もその時ばかりは大きなものになっていた
「…今日は本当お疲れ様、ルルーシュ、ルルーシュも早く寝なよ?…あたしはルルーシュの方が心配だな」
「…いや、大丈…「嘘、すっごい疲れた顔してる」
こつん、と真っ白な細い指が額に当てられ、ルルーシュは少しだけ驚いた顔をした
「おやすみ」
普段見せないような、大人びた笑顔を見せたはC.Cと同じように部屋を出て行った
ルルーシュは少しの間其処で固まっていると、しかし部屋を出て行く
彼が自室に入ったのを物陰から見ていたは、ふぅ、と安心したような息をついて自分も部屋へと向かった
「いたたた…」
小鳥の囀りなんて久しぶりに聞いたは少しだけ目覚めがよかったが、襲ってきた右手の痛みにそれもすぐ消えた
やはり少し膨れ上がり、青紫に変色している右腕は痛みが伴う
しかし一晩ぐっすり寝たの体力は完全に回復していて、そっと右腕に手をのせると意識を集中させる
生ぬるい感覚のあと、すっと痛みが引いていく
「よしよし、」
段々と変色した部分が消えていく
はそれを満足げに見ていたが、途中で治癒を止めた
「……おかしい」
ベッドから少し起き上がっただけのは、ぽつりとそう呟く
「力が…入らない」
そう、治癒するための力がぴたりと無くなってしまったのだ
以前はこんなことありえるはずも無く、は眉を顰めて手を握った
「疲れが抜けきらないんだろう」
扉の方から聞き覚えのある声
すっと視線を投げると翠の髪を靡かせたC.Cが金色の瞳を向けていた
「あ、おはようC.C」
「おはよう、、お前は既に元気になった気だろうが、今日はまだ疲れが溜まっている状態なんだろう、学校は休め」
え、と声を漏らす
C.Cはそれだけ言うと部屋から消えた
「…でもルルーシュに…「おい、」
今度は先ほどより少し低い声
珍しくルルーシュが私服だった
「どうしたの、ルルーシュ」
「ナナリーが熱あるみたいなんだ、俺は今日休むからお前も疲れているだろう?今日は休んでおけ」
彼らの言動がこれほどマッチしていることに、は苦笑いを零す
ルルーシュは勝手に笑みを浮かべたに首を傾げたが、用件だけ言うと、早く着替えろよ、と部屋を出て行った