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「捕虜になるのはアンタの方よね」

ぎろりと睨みを利かせてカレンはスザクを見た
それでもスザクは真っ直ぐな瞳でカレンにに問う

「その前に教えてもらおうか、ゼロの正体を…」
「…自分で確かめたら?」

数回瞬きして目を細める
しかしスザクはそんなカレンの様子を見て、彼女もゼロの正体を知らないと悟った
カレンは一瞬瞳を驚きの色に染めるが、続くスザクの声に素っ気無く答えていく

「君は何故ゼロに従うんだい?」
「さあね、自分で考えたら?」

カレンの言葉の後、スザクは考えるように視線を泳がせる
しばらくそっぽを向いていたカレンは、急に声の発しなくなったスザクを不審に思い、横目で彼を捉える
スザクはぐっと唇を噛んでから、口を開いた

「それじゃ、あの狐の少女の正体は…?」
「なっ、彼女は関係ないわ、答える必要もないでしょ」
「…そうか、彼女の正体も知らないのかい?」

妙に慌てた様子のカレンに、スザクは静かに言い放つ
するとカレンはば、とスザクの方を向き、声を荒げた

「知ってるわよ、でもアンタには関係ないでしょ!彼女は…」

凛、なんでしょう?」

呟くような声色
だがカレンは目を見開いてスザクを見やる

「な、なんで…」

驚いた様子を露にするカレンに、スザクは一瞬悲しそうに目を伏せる
眉を顰めるカレンは、ぎっと彼を睨んだ

「何を根拠にそんなこと…でっちあげもいいところよ」
「でっちあげ?君はそう言うのかい、君だって知っているんだろう?」
「…なんで…」

スザクは高い空をすっと仰いだ

「さっき逢ったよ、凛もここに流れ着いてしまったらしい…」
凛も此処に!?」

ついに彼女の名前を出してしまったカレンは、微かに表情を歪める
スザクは薄い笑みを零してからカレンに振り返った
その表情には、僅かな悲しみが湛えられている

「…凛は、ゼロが大切なんだね、僕じゃ凛の意思は変えられなかった…いや、それ以前の問題なんだろうけど」
凛が自分から素顔を見せたって言うの?」
「いや、そうじゃない…倒れていた凛の顔に面がついていなかったんだ」

そう言うスザクの懐には、狐の面
あのまま凛に返すことなく、此処までやってきてしまったので仕方がない
しかしこれを返すべきなのか、スザクは悩んでいた

「…凛はあたし達の仲間よ」

ふいに吐かれた言葉に、スザクは目を伏せた











「河口湖の時か…」

岩の後ろで呟いたルルーシュの声が、波のさざなみによって響いていく
その反対側で先ほどのユフィのように、着ていた衣服を脱ぎ、マントを羽織る凛がいた
隣で二人の話をじっと聞いているユフィ

「…それからね」

ふと凛が思い出したように口を開く凛に、ユフィは顔を向ける

「…す、…スザクにね、バレちゃったの」

ユフィの目が微かに見開かれる
ルルーシュは後ろにいるため表情は分からないが、声が驚きの色に染まっていた

「なっ、スザクにか!?」
「…さっき、砂浜のところで…、面がね、とれてちゃって…」

視線を宙に投げ出す凛の表情はどこか重い
冷たい腕が、ぎゅっとマントの裾を引っ張った
今だ濡れている髪の毛から雫が静かに滴り落ちた

「ということは、スザクもこの島にいるということですか?」
「うん、」
「…そうか、そして誰も何故此処に流れ着いたか分からない、ということか」

風になびかされた漆黒のコートは段々と水気が飛び、それを確認した凛はずぼ、と顔から服を被る
もういいよ、と凛の声のあと、マントがルルーシュに返された

「じゃ、何か探しに行く?ユフィお腹空いてるんでしょ?」

無理したような笑みを貼り付け、凛は立ち上がる
喉まで出掛けた言葉を飲み込んだルルーシュは、同じように立ち上がった






数時間後、夕日の傾く砂浜には眉毛をへの字にさせたルルーシュがいた
目の前にはユフィと凛がとってきた果物
食べないのですか、と尋ねるユフィに、ルルーシュは視線を彼女に向ける

「明日はできると思いますよ、落とし穴」
「ぶっ!」

食べかけていた果物をユフィの言葉により、器官に詰まらせる
慌てて胸をどんどん、と叩き、凛はユフィを見つめる

「…ユフィ、あのさ、もしかして結構毒舌だったりする?」
「毒舌…?」
「ごめん、今の取り消して」

きょとんと首を傾げるユフィに凛は隠れて苦笑いを零した
彼女の言葉がぐさりと胸に刺さったルルーシュは、ようやく果物に手を伸ばす

「頑張ってルルーシュ、男には体力も必要なんだよ」
「黙れっ」





きらりと星が一筋流れる
巷で願い事を願う、なんて言われている流れ星を目を細めて見つめる三人

「…星は変わりませんね、あの頃のまま…」

ぽつりとユフィが呟く
ルルーシュのマントの上で横になるユフィと、その隣に座る
少し高くなった岩の上でルルーシュも空を見上げていた

「あの頃のままでいれたら、どんなによかったでしょう…」

悲しそうに星を映す二つの薄紫の瞳は、僅かに揺らいでいた

「…戻れないのでしょうか」
「……―そうだね」

ルルーシュも表情を悲痛に歪ませて、呟く
凛はただそんな二人の間にで、静かに星を見つめるだけだった


「…寝ちゃったね」

暫く沈黙を守っていたとおもっていたユフィだが、静かに寝息をたてている
そんなユフィに微笑みかけた凛は、そっと立ち上がりルルーシュの隣に腰を下ろした

「ルルーシュは戻りたいと思うの?」

大きな黒の瞳は、なんの迷いもなくルルーシュを映し出す

「…戻りたいさ、俺だってユフィだって、ナナリーだって…、みんな…」
「そう、だよね、ルルーシュが王宮にいた頃は、平和だったんだろうね」

再び空に戻される凛の視線に、ルルーシュは手を小さく握る
凛は悲しげに眉を寄せて、星を見つめていた

「だけど、ルルーシュがあのままだったら、スザクには出会わなかっただろうね」
「…それはそうだろうな」
「シャーリーにもリヴァルにも、今の時間と限りなく違う空間にルルーシュはいた」

そっとルルーシュは凛を見る
今だ宙を彷徨っているようにも見える凛の瞳
小さく口を開いた

「不思議なものだよね、あの頃は幸せだった、でも今の現在にだって多少の幸せは感じてるでしょう?
あの頃のままだったら今の幸せは作れない、いや、知らないんだからそんなことも感じないでしょうけど
スザクに出会って、アッシュフォード学園に入って、リヴァルやシャーリーという友達ができて…」

凛が小さく固まった息を吐き出したのが分かった

「過ちや嘘があったとしても、巻き戻すべき時間なんて、ないのかもしれない」

急にこみ上げる孤独という名の寂しさに支配され、ルルーシュは一瞬固く瞳を閉じた
止め処なくあふれる感情と、行き場のない苦しさ
分かっていた、もう戻れないなんて、このギアスという力を手に入れたあの時から、もう何もかも捨てる覚悟はあった

「人の運命って、そういうものだと思う」

だけど隣にいる少女の声で、そんな覚悟さえ、崩れそうになる

「それは経験か?」
「…予定だよ、人間全ての、逆らえない運命という予定の」

星は美しく瞬いていた