も日本人なんですよね」

言葉の意味を、はよく理解できなかった

確かにあの島にいた時ユフィにはブリタニアとのハーフではなく、自分は正真正銘の日本人だとは教えた
しかしそれを何故問うのだろうか

「ユフィ…?」

段々とユフィに疑問と恐怖が湧いてくる
全身が凍てつくような感覚に陥り、そして無意識に握り締められた拳が痛い
今だ笑みを湛えたままのユフィを、はもう一度呼んだ

「…ゆ、ふぃ」

そしては気づいた
彼女の淡い紫色の瞳が、不自然に紅く染まっていることに

まさか、と気づいた時にはもう遅かった
絶対遵守のその力によって、ユフィはイレブンを虐殺しているのだ
理由は分からない
だがユフィのその瞳は王の力によって染め上げられている
そうしては思わずユフィに掴みかかろうとした

「ユフィっ!駄目!惑わされないでっ、その命令はっ!」

バン

の言葉が不自然に遮られる
その音の根源はユフィの腕の中の機関銃からで
の左肩は大きな衝撃により、左に反れる

「…え?」

がくり、との意思とは関係なく彼女の膝は折れる
そしてそのままバランスを失ったの身体は地面に崩れていった

状況が掴めなかった
ましてやその衝撃を回避しようなど、今のの脳ではそんな選択肢はなかった
はへたり込むようにしてその場に座り込んだ

「ごめんなさい、でもイレブンは殺さなきゃ」

何を言っているのだろう、それさえもには認知できない

左腕をつう、と暖かいものが伝ったことにより、はようやく我に返る
止血もできないような弱弱しい力で、は無意識の内に熱く痛む左肩に右の掌を宛てた
掌が触れると、そこは暖かいもので溢れかえっていた
す、と掌を其処から離してみると、白かった自身の掌は真っ赤に染まっている
そう、真っ赤な新鮮な血によって

「ぇ…」

情けない掠れた声しかの唇からは漏れなかった
そうしては左肩を撃たれたのだとようやく理解する

どうして?

その疑問しか出てこない
左肩を申し訳程度に押さえるは、ただユフィを見上げることしか出来なかった

はイレブンだから」

ユフィの声がびん、との耳に響く

これが王の力、ルルーシュの力なのだと、は意識の何処かで悟った
見上げる黒の瞳には、依然、微笑むユフィの顔が映る
しかしは目を見開いた
絶対遵守の力によって染まった紅い瞳の淵からは大粒の涙が零れ落ち、弧を描く口元を滑っていたのだ

そう、ユフィは泣いていた
瞳を紅く染めながらも涙を流し、しかし口元は笑みを湛えたままで

「ユフィ…っ!」

ユフィとて、こんなことしたくはないのだ
彼女が望んだのはイレブンとの共存なのだから
しかしユフィのそんな想いも、王の力の前では儚いものでしかない
だからユフィは泣いていた

「(さっきのは、ユフィの想い)」

此処に来る少し前に見た、ユフィの姿はきっと彼女の意思
どんな形であれ、に気づいてほしかったのだろう
自分がルルーシュやナナリーが幸せになれる世界を作りたいと思っていることを

「ごめんなさい、、」

ユフィの言葉と同時に彼女の顔の淵から涙がぽろり、と零れ落ちた
そのすぐ後に、再び銃声が鳴り響く
銃声と共に放たれた鉛の塊はの左胸に向かっていく
それがあたった瞬間、の身体は大きく後ろに反り返った

そのまま重力に逆らうことなく、の身体は地面に吸い込まれていく
ひどくゆっくりと時が刻まれていくように感じる
その瞳は、涙を零すユフィから、真っ青な空へと視界を移した

「ゆ、ふぃ…」

どさり、との身体が完全に地面に崩れた
どくどくと痛む左肩に比べ、その斜め下にも銃弾が当たったはずなのに不思議と痛みはない

「(死んじゃうからかな)」

柄にもないことを思いながらも、の意識は遠のいていく
そんなの横をたっ、と駆け出すユフィを止める術はない

「(なんで、どうして、…ルルーシュ)」

ようやく目に見えてくる暗闇は、確かな絶望を齎し
壊れた歯車は元に戻ることを知らない
そして終わりの始まりが近づいてくるのだ

つ、との頬に一筋の涙が伝った