罪悪感は、少しだけある。確かに人の食事に勝手に薬を盛ったのはいけないことだとは思うけど、僕の凛を想う気持ちに比べたら。そう勝手に自己完結してから僕は自然と口角が上がるのを感じた。
凛ははっきり言って男勝りだ。可愛い顔をしているくせして、華奢な身体をしているくせして、男勝りだ。まず死ぬほど負けず嫌いである。彼女が作戦で失敗することはほとんどない。だけどたまに僕やジノが自分よりいい結果を残せないと何度も同じような作戦を繰り返そうとするし、僕達から負けを認めようとしない。(はっきり言って僕もジノもそんなに気には止めていないのだ)それから自分を女性扱いされるのを極端に嫌う。凛は女の子だから、なんて言えば恐怖の鉄拳が飛んでくることはまず間違いない。食事だってそうだ。絶対に胃に収まらないような僕達と同じメニューを頼んでそれで食べきれずに苦しんでいるところを僕は何度も見かけている。それでも負けず嫌いの彼女は絶対残したりはしない。おえおえ言いながら食べきってしまうのだからすごいと思う、本当に。凛の負けず嫌いも、男勝りも少々なら可愛いものだが極端なものは悪く言えばただの意地っ張りだ。ちなみに言えば僕と凛は恋人だったり、する。凛が許してくれるのは勿論キスまでだ。ただでさえ男女の関係を嫌う凛だからそれ以上は決してさせてくれないのだ。間違えて胸なんて触ろうとすれば一週間は口を利いてくれない。これはさすがにきついので、僕は一度も凛の体に触れたことは無い。悪いけど僕だって男だ、恋人に触れたいと思うのは当然のことだと思うし、だから。
凛の自室の前で足を止める。通常なら赤外線で僕の身体を感知して開く扉もびくともしない。食事の後凛は気だるそうに部屋に戻ったと先ほどアーニャに聞いたばかりだ。多分、僕の盛った媚薬が効いてきて慌てて部屋に戻ったんだと思う。ついでに言えば凛は自分が弱っているところを決して人には見せない。だからこの間凛が高熱を出したときだって部屋に篭りきってしまった彼女の元に医者が辿り着くまで2日以上掛かってしまった。意地っ張りもここまでくればどうかと思う。多分今夜も身体の調子が悪いので部屋に篭る気なのだ。扉にはロックが掛かっている。それでも僕は締りの無い笑みを浮かべたままボタンに手を伸ばした。凛は意地っ張りだが案外可愛いところがある。このロックナンバーだって多分僕の誕生日か、僕の誕生日と凛の誕生日を足した数字か。前者はさすがに自意識過剰かもだと思うからあえて後者の数字を入力した。するとあっけなく開いた扉、僕は再び笑みを浮かべて薄暗い室内に足を踏み入れた。
お目当ての少女は部屋の中央にいてくれたキングサイズのベッドの真ん中にぐったりしていた。このベッドのサイズだって凛がオーダーしたものだ。シングルで充分過ぎるところを態々キングサイズにして、はっきり言ってこのベッドは毎回毎回4分の1使われているか、ぐらいだ。大きな枕に頭を乗せて大袈裟に呼吸を繰り返す凛は横を向いて横たわっていたのですぐに僕の存在に気が付いた。だけどいつものように視線に鋭さはなく、熱っぽい視線で僕を見るだけだ。
「凛」
ぎしり、と凛の手前に腰掛ける。白い頬は赤く染まり、大きな瞳は半分程度しか開かれていなくてじんわりと涙が浮かんでいた。可愛い、いつもの凛からは想像もできないような姿だった。
「すざく、」
舌足らずな声音で名前を呼ばれて腰に重い疼きが走った。そ、と細くてやや汗の滲んだ首筋を撫で、鎖骨まで指先を滑らせる。凛はぴくりと肩を揺らして僕を見た。
「ごめんね、薬、効いてきたでしょ」
「ふざけるな、くすり、なんて卑怯だ…」
罵声が飛んでくるも声に鋭さはなくて、ただ呟いているような、そんな言い方で迫力もあったもんじゃない。即効性と書いてあった薬は2,3滴で効果を示すらしいけど僕は小瓶に入っていた媚薬の殆どを凛の食事であるそれに入れてしまった。あれから2時間は経っている。きっと止まらない疼きが苦しくて仕方ないんだろう。抵抗もしなければただ僕をじい、と見つめるだけの凛は本当に可愛かった。
「ん、かわい、凛」
鎖骨辺りを滑らせていた指をそのまま胸元まで滑らせる。黒のインナーの上から小ぶりな胸の上を何度も何度も指先で突けば凛は今まで見たことも無いような反応を僕に返してくれた。真っ赤に染まった頬、ん、とか甘い声を漏らしながらぎゅうと瞳を瞑ってしまう。可愛い、可愛い。凛はただ僕の指先から送られる快感に素直に反応してくれるだけでいつもの馬鹿とかやめろとかそういった抵抗の言葉も、勿論行動も無かった。それをいいことに、ゆっくりゆっくり少しずつ僕はその薄いインナーを捲っていく。段々と見えていく白い肌に、思わず息を呑んだ。
「ふ、…は、…はあ」
苦しそうに呼吸を続ける。媚薬の効果は強烈だった。それでも凛は快感を貪らずに必死に我慢している。きっと苦しいはずなのに、やっぱり凛は負けず嫌いだ。インナーを捲り上げ、それから質素な下着も一緒に押し上げる。凛は着やせするタイプなのだろう。ふるりと零れた乳房は僕はいつも思っているよりもずっと立派で、でもやっぱり華奢な彼女だから通常の乳房よりはやや小ぶりだった。桃色の突起は触れてもいないのに反応を示してつん、と天井を向いている。それが可愛くってそんな小さな突起を僕は躊躇することなく軽く指先で弾いた。
「ひゃあっ、あ」
苦しそうに瞳を瞑って凛は硬く結んだ唇から思わず声を漏らした。それから不安そうに僕を見る凛ににこりと笑ってみせて、横を向いている凛の細い腕に挟まれた乳房を掴む。そのあまりの柔らかさに、目を丸くした。ぐいぐいと上へ押し上げるように、それから押しつぶすように強く押し込めば凛はあ、とかやあ、とか信じられないくらい甘い声を漏らしてくれた。
「気持ちいいな、凛の胸、食べたいくらい」
横を向いて乳房を挟み込んでいた細い腕を退け、無理な体勢のまま上体を屈めてその白い胸に顔を埋めた。仰向けに寝ているのなら良かったのに、よりによって横を向いているため、この体制は辛い。重力にしたがって下へ流れる乳房を追いかけるように吸い付いた。本当に、食べてしまいそう。ちゅうちゅうと音を立てて突起、それから大きく口を開けて乳房全体をまるで本当に食べてしまうかのように咥内へ収めて強く吸い上げる。それでも咥内になんか入りきらないというように零れる肉を舌でちろちろと嘗めた。おいしいなんて、おかしいかな、僕。
「やあっ、あ、んんっ、ふえっ、すざくうっ」
媚薬で敏感になっているそこを執拗に攻める。放り投げられた細い腕はいつの間にか抱き締めるように僕の頭を弱く押さえつけていた。求められているようで、余計興奮した。横になって寝そべる凛の胸をこんなに吸い付くなんて、傍から見たらまるで乳児が母親から授乳を受けているような光景になっているだろうと思う。吸い上げながら何度も何度も所有印を刻んでいるからきっと明日の朝、この白い胸は赤い痕で埋め尽くされているんだろう。震える突起を再び咥内に含んで、弱くそれを噛んだ。瞬間、凛はびくびくと痙攣しながら小さく悲鳴を漏らす。ぽろりと、凛の硬く瞑られた瞳から涙が零れた。
「え、凛イっちゃった?」
「あう、あ、」
顔を上げれば放心状態の凛と目が合った。口を薄く開いてそこからだらしなく唾液が零れている。それすら淫靡に見えて、その肩を押して漸く仰向けの状態にした。そんな痙攣し続ける身体の上に跨って再びその胸に顔を埋める。そのままゆっくり身体をずらしながら柔らかい腹筋、脇腹を舐め上げた。震える肢体を優しく押さえつけながら、素早く下着とズボンを引き下ろす。覆い隠すもののない秘部だが、凛はさして隠す様子も見せずにぼんやり僕の行動を見つめるだけだ。抵抗する余裕すらないのだ。白くて柔らかい太腿を何度も何度も唇で挟むように愛撫しながら両方の膝裏を掴んでその両脚を開脚させる。M字に開脚された奥に可愛らしい凛の性器を見つけて、僕はやっぱり微笑んだ。
「可愛い、なあ」
言い聞かせるようにして、そこに顔を埋めた。
「あっ、まっ、て、やあっ、んんんっ、ふああ」
足の付け根に手を置いてべろりと、其処を舐めた。とろとろと止め処なく溢れる愛液を全部飲み干してしまうように何度も何度もそこを吸い上げる。僕の弱い押さえつけの下で震える白い脚、そっと花弁を開いて膣内に直接舌を差し込んだ。信じられないほど柔らかくふやけたそこはすんなりと僕の舌の侵入を許し、挙句の果てにはさして長くない舌すら締め付ける。凛は処女ではなかったのか、と改めて媚薬の強烈さに目を丸くした。
「あんっ、やっ、…すざ、ふえっ、ん…ああ」
「気持ちい?凛」
「やああっ、やだあっ、へんっ、なんか、っ、へんっ…」
1回もう既にイったくせに何を言うんだろう。再び襲うオーガズムに凛は涙をぼろぼろ零して首を緩く横に振った。それに気付いて僕は静かに上体を起こした。濡れた瞳が物欲しそうに僕を捕らえる。
「ね、挿れてほしいでしょ?」
返答する気力は凛には既になかった。ただじい、と穴が開くほど僕を見つめるだけの凛の薄く開いた唇にしゃぶりついた。積極的に僕の侵入する舌に絡みつくことはなかったけど、抵抗も勿論なかった。流し込んだ唾液を飲み込まれることはなく、だらしなく凛の口端を伝う。キスの最中、凛は安心したように瞳を閉じたので僕はその隙に、とすばやくベルトをはずして自身を取り出し、すっかり解れたそこに自身を突き刺した。
「んんんっ、ん、ふっ、ううっ、」
口を塞いでしまっているため、可愛らしい悲鳴は僕の口の中に消えた。一気に根元まで挿入してから一度動きを止めて唇を離す。凛は半分しか瞳を開かないまま、僕を見つめる。それににっこりと笑い返してゆっくり腰を引いた。抜けば溢れる愛液、ぎりぎりまで引き抜いて一気に最奥まで突き上げる。その衝撃に大きく跳ねる薄い腰を掴んでずんずんと挿入を繰り返した。
「あっあっあっあっ、あっ…んっ、ん、」
突き上げるたびに嬌声は短く途切れる。それが心地よくて、僕は発見したいいところを重点的に先端で攻めた。ぐりぐりと其処ばかりを抉れば、凛は目を見開いて僕の肩にしがみ付いた。それから今日一番高い声を上げて再び達した。
結局僕は意識の飛んだ凛を何度も起こして、僕の満足がいくまで彼女を抱き続けた。初めてなのに凛は恐ろしいほどの疲労感を抱えたまま最後は死んだように眠り入った。後処理をきっちり行い、そのまま凛のベッドで朝まで過ごした僕は朝目覚めると、鳩尾に信じられないような痛みを覚えた。凛はシャワーを浴びていて、多分朝飛び起きて腰の重みを感じたままシャワー室へ向かったのだろう。ぼんやりと凛が出てくるのを待っていると、ほかほかと湯気を上げながらバスローブを羽織った少女が射抜くように僕を睨んでいた。
「スザク、絶対許さないからな」
そう言い残し、凛はそそくさと下着を着けて騎士服を身に付け部屋から消えた。一方全裸でベッドに放置された僕はそれでも許さないといいながら頬を染めていた少女を思い出して思わず笑みを浮かべてしまった。会議室で眠りこける凛に怒っていないか問うても、凛は曖昧にはぐらかすだけで怒っているわけではなかったらしい。それでも今後絶対あんな行為はしないと宣言した凛は、しつこく怒っていないの、と質問する僕にこう吐き捨てた。
「恋人なんだから、一度くらいならいい」
それから僕は毎晩凛の部屋へ訪れては、追い出される毎日を送ることとなった。
上手なキスの仕方を教えて