ちょっと病んでるスザクさんがヒロインを監禁してる話
ジノさんがかわいそうです
地下の特別監禁牢、通常のらせん状の牢屋と違いその何重にも施されたロックを外す許可を所持しているものは少ない。通常の牢屋には入れられない者、死刑、または死刑を免れた罪人が監禁される場所である。その監禁牢に入る入り口に二人の軍人、そうして罪人の部屋へと続く分かれ道でも数人の軍人が立っていて、牢屋自体はデジタル的なものではなく鉄格子だ。床も壁も冷たいコンクリート。子一時間其処にいるだけで気がおかしくなるものもいるという。そんな場所へナイトオブラウンズのジノ・ヴァインベルグが来た理由など恐ろしく簡素なものだった。暇だったのである。別に罪人を見てどうにかなるわけでもないのだが、ただ足を運んだことがなかった場所があったことにジノは不服だった。行きかう軍人は驚いたようにジノを見るし、その瞳に怪訝そうなものが含まれているのは仕方ないことであった。ふと曲がり角を越えて見えたのは人気のない牢屋が並んだそこ。先ほどまで聞こえていた罪人たちの醜い叫び声はない、このブースに人間はいないのか。そう思案して踵を返した刹那である。
「っ、は、…」
小さな小さな、恐らく荒い息遣い。それでも見渡す限り続く牢屋に人影は見つからず、ジノは首を捻って足を進めた。すると見えた一つの牢屋、一番奥の、しかもちょうどそこだけ壁が一回り分窪んでいて決して入り口からは見えないであろう牢屋。軍人の性質と言うのだろうか、無意識に息を潜めていたジノの瞳に飛び込んできたのは思ってもない光景だった。
「うっ、あっ…、はぁ」
通常より狭いコンクリート張りのそこにいたのは一人の少女だった。白い簡素すぎる拘束着の上から両手は後ろ手で縛られている。そうして目元には黒い布、こんな死刑囚しかいないようなこの牢屋に何故こんな少女がいるのか、ジノは不思議でならなかった。人を見た目で判断する気はない、彼女が死刑になるほどの罪を犯したからここにいるのだろう。
「っ、ん、」
苦しんでいるように動けない身体で必死に床を這いつくばっている。息は荒く、白く伸びる太腿は透き通るように美しい。思わず息を呑んだジノは咄嗟にロックを解除して中へ足を踏み入れていた。
「っ!」
瞬間苦しそうに息を続けていた少女はぴたりと動きを止めて怯えたように覆い隠された視界でジノを見る。そうして漏れそうになる呼吸を冷たい床に唇を押し付けて耐えていた。ジノを、見張りの軍人と勘違いしているのだろう。少女はひどく怯えていた。ふと彼女の足元に手の付けられていない食事が見えた。
「…、っ、」
「…」
そのうち薄い肩が不規則に揺れ始める。怯えている、一目瞭然だった。
「おい」
声を掛けずに入られなかったのは何故だろう、とジノは言ってから思案した。少女はびくりと大袈裟に肩を揺らしてから気配を察知するように眉を寄せてから震える唇で小さく告げる。
「…、だれ、」
恐らく彼女が予測していた人物と違う声音だったのだろう、ジノは床に転がる少女を見つめてから膝を折りその場にしゃがみ込んだ。良く見れば白い頬はじっとりと汗をかいていてそうして桃色に染まっている。この黒の布の奥にはどんな瞳があるのだろうと、ジノは異常なほどの好奇心に駆られた。長い栗色の髪の毛は絹糸のようで決め細やかな肌は触ってみたいようなものだった。
「…、」
ジノは何も言わずに目元の布に手を伸ばした。しゅるり、白い肌の上を黒が滑る。
「っ」
見えたのは同じような漆黒だった。ぱっちりとした瞳は人形の其れと重なり、しかし目元には涙が溢れんばかりに溜まっている。思わず感嘆の声を漏らしそうになるほどの容姿、それでも今の彼女はひどくジノにとって淫靡に見えて仕方なかった。紅く染まった頬に潤んだ瞳、少女は我慢できないといった様子で辛そうに瞳を細めた。
「あっ、…たすけ、て」
どくり、と何かよく分からないそれがジノの身体を走る。少女はそれを告げるとかくり、と擡げていた頭を床に預け再び荒い呼吸を続けた。ふいにジノの視界に入った白い太腿はもじもじと擦りあわされていて少女を見えば泣きそうに表情を歪める。
「たすけっ、ひっ、たすけてェ、っ」
ついにはぼろぼろと大きな瞳から透明な粒が溢れ出る。止まることを知らないそれを綺麗だと思案しながらジノはまさか、と彼女の足の付け根に手を這わした。瞬間少女の体は不自然に跳ねてジノの指先にはじっとりとぬめついた何かが纏わりつく。一際高い悲鳴が響いて、ジノは目を見開いた。
「、…え?」
「たすけてっ、おねがっ、たすけ、てえっ」
懇望する少女にジノはたじろぐことしか出来なかった。特別監禁牢に放り込まれている少女、それだけで異様な光景だというのにその少女の秘部には、玩具が挿入されていた。桃色の少女の性器を割って蠢く玩具は何度も何度も秘肉を抉る。
「ちょ、と…なにこれ、」
さすがに驚かずに入られなかった。それでも彼女は狂ったように泣き続け、しかし決して叫んだりするようなことはしなかった。ここにいるということは少なからず彼女が罪人であるということ。苦しんでいる少女ではあるが彼女を助けることに果たして意味はあるのだろうか。帝国騎士としてジノは暫く考え込むと、す、と手袋に覆われたままの手を彼女の太腿に滑らせた。
「ひっ、あっ、たす、え、…おねがい、あっ、」
ジノを懇望するように見る少女を一瞥してから濡れるそこに指を掛けた。柔らかい秘肉の合間に感じる硬く冷たいそれは低い羽音を響かせていつまでも振動している。ピンク色の膣から映える玩具のコードがひどく淫靡ではあったがジノはずりゅ、と玩具を優しく引っ張り出した。
「ふあ、」
ぬちゅ、といやらしい水音を響かせながら徐々に徐々に彼女の中から抜き出される玩具。ちゅぽん、と先端の一番太い部位が抜けると膣からは大量の愛液が溢れ出た。少女は一瞬目を見開いて大きく痙攣するとそのまま虚ろに視線を泳がせる。今だ振動する玩具を放り投げ、床に倒れ込んだままの彼女の顔を覗き込むジノに小さな小さなそれが届いた。
「…、あ、…ごめ、んな、さ」
ふ、と意識が落ちた彼女はそのままぴくりともしなくなった。驚いて口元に耳を寄せれば小さな呼吸が感じられるがひどく不規則だ。細い手首の脈を測っても時々感じられるほどで今まさに脈が止まってしまいそうなものだ。仰向けにして初めて少女のその衰弱した身体を直視する。薄く開いた唇から漏れる吐息は今にも消えてしまいそうで。いくら罪人といえども彼女を目の前で衰弱死させるわけにはいかない。慌てて床に転がる少女を抱き上げればその細く軽すぎる身体に驚愕しながらも身体を反転させた。
「何してるんだい」
「…お前こそ、何してるんだ、…―スザク」
鉄格子の手前にはいつの間にいたのかナイトオブセブンが険しい表情でジノを睨んでた。こんな場所で何をするのか、ジノは思わず鋭い眼差しで彼の翡翠を見た。
「彼女を放せ、ジノ、そいつは罪人だ」
「そんなの知ってる、だけどこのままじゃ死ぬ」
そう、本当に死んでしまう。ジノの腕の中でぐったりと、ぴくりともしない少女から生気は感じられない。それを告げどもスザクは別段表情を変えるわけでもなく少女を睨む。
「黒の騎士団でゼロと特別に関与していた人間だ、」
「…だからって、このままじゃ彼女本当に、死ぬぞ」
「死ぬ、…大丈夫だよ、死なない、リンはゼロの大切な人間なんだ、きっと簡単には死なないよ」
その瞬間、ジノは異常なまでのスザクのリンと呼ばれた少女に対する執着心を感じた。ああ、きっと彼女をここに放り込んだのはスザクだ、ジノは断定する。今にも自分の腕の仲の少女を奪い取らん勢いで此方を睨む翡翠はジノが初めて見るものだった。
「お前、おかしいぞ」
「君こそ犯罪者の女なんか抱き上げちゃって、何?リンに惚れたわけ?」
「兎に角彼女は軍の病院に連れて…」
「駄目だ!」
びん、と響く少年の声音にジノは驚いたようにスザクを見る。スザクは今まで見せた事のないような、まるで獣のような捕食者の瞳をして射殺さんばかりにジノを睨んでいた。
「駄目だ、そんなことしたら逃げてしまう、せっかくここに入れたんだ、絶対にリンは手放さない…!」
固執していると思った。リンという少女に、帝国の騎士とあろうものがここまで固執するなんて。信じられないほどの執着心を見せるスザクにジノは何も言えない。ただ息をしているのも分からないような少女が今にもスザクの腕に渡ってしまいそうで、きっとそのまま彼女は殺されてしまいそうで、ジノは無意識に後ずさる。こつん、と踵に硬いものが当たった。
「…君が、出してあげちゃったの?」
見えたのは桃色の玩具。先ほどまでリンの膣内に突き刺さっていたものだ。生々しく先端には今だ乾かない愛液が付着している。スザクが歪んだ笑みを一瞬浮かべ、時折ぴくりと痙攣するリンの白い太腿に視線を投げた。
「せっかく僕が躾けてたのに、余計なことしないでくれるかい?」
「…スザク、どうしたんだよ、お前らしくないぞ?何言ってんだよ!」
「五月蝿いな、早くリンを返してくれるかな、ほら」
手を伸ばす。本当に、今彼女をスザクに渡せば彼女は間違いなく死んでいってしまうような気がした。
「こんなこと、いくら彼女が犯罪者だからって、犯罪だぞ!?」
「どうして?罪人に拷問はするでしょ、それと同じだ」
今のスザクに何を言っても無駄だと、ジノは思案した。スザクと鉄格子の出口は僅かに距離がある。走れば彼の横を抜けるかもしれない。ジノは一度息を呑むと、ぐ、と足に力を入れた。そして飛び出す。スザクが犯罪者になってしまわないように、彼女を死なせないために、ジノは駆けた。
「っ!?」
太腿に焼けるような熱い痛みを感じてジノはがくりとそのばに崩れる。見ればじんわりと滲んだ真紅が彼女の拘束着に付着していた。スザクを見る。少年の手には銃。ジノは目を見開いた。
「君はいい友人だったよ、でも僕とリンの間を邪魔するんなら死んでもらわなきゃ」
痛みと大量の出血に視界が霞んだ。腕の中から少女が消える。歪んだスザクの笑みの下に動かない彼女。紫色の唇に耳をあてスザクは笑みを浮かべると生きてる、なんて嬉しそうに告げた。銃口はジノを捉えたまま。
「君にリンのこと知られちゃ不味かったんだよね、だからさ、ごめんね」
死体処理とかは苦手じゃないんだ、スザクはそう呟くと綺麗な笑顔を見せた。
「じゃあね、」
スザクの片手によってその腕に収まる少女の瞳が僅か開いた、気がした。
責めて苛んで、絶望に堕ちたところで救いあげよう
(きっとそこは地獄は天国か、どちらでもないのかもしれないけれど)