暖かい手だった
ゆっくり頭を撫でられるのが分かる、以前彼にも、ルルーシュにもこうやって撫でてもらった記憶がある
華奢で白くてそれでいて暖かい手だった
まさかその手が血で汚れているだなんて誰も分からないであろう、優しい手
懐かしいと思って、瞳をこじ開けた

しかし見えたのは薄暗い、僅かに月明かりが感じられる天蓋
そうして、ぼやける視界に懐かしい栗色を見つけて、それを見つめた

「スザ、ク」

漏れた自身の声は紛れもなく彼の名を紡いでいた
頭の上に置かれた手が強張るのが分かった

「…、」

数回瞬きを繰り返して、そのうちに段々と視界がクリアになっていく
翡翠の瞳はじ、と此方を伺っているかのように真っ直ぐだった
は漸く我に変える

「っ!」

飛び起きて思わず彼との距離をとる
今だベッドに寝かせられていた自分の横で椅子に腰掛けていた彼は僅か目を丸くした
しかしすぐに穏やかな表情を見せて、明らかな警戒心を向けるに微笑んでみせる

「…大丈夫?」

何を白々しく、そう思惟してはぐ、と眉間に皺を刻んだ
ジノ・ヴァインベルグに酷使された身体は今だ熱を宿していたが、何より腰の鈍痛がひどい
さり気なく下半身を労わりながらはスザクを睨みつける
どうやら剥がされた拘束着は律儀に着せられているらしく、しかし下着はつけられていなかった
つまり、秘部を覆い隠すものは何もない
はひどく羞恥に顔を染め、それからシーツを自身の方へ手繰り寄せた

「…随分と馬鹿なことするお友達ができたんだね」

あちこちに刻まれた紅い痕が微かに痛みを伴う
ベッドの最端まで身を移動させたは、目元を紅くしながらスザクの出方を伺った

「…、その、初めてだったの?」
「…、貴方に関係ない」

貴方、と名前も呼ばれぬ空虚感にスザクは心臓をまるで何かに突き刺されたかのような錯覚に陥った
否、それは馬鹿な思惑だった
そもそもはスザクがをブリタニアに売ったのだから、同情はくだらない感情である
それでもという記号が今だスザクを支配していることに、間違いはなかった

「馬鹿みたい、どうせ拷問代わりなんでしょう、捕虜の女なんかに…普通に拷問すればいいじゃない」
「…」
「でも残念、あたしは何をされても貴方達に屈服する気はないから」

黒の瞳が暗闇の中で煌々と怒りの炎を灯しているのが分かる
だがジノはきっとただ単に見せしめのためだけにの身体をこじ開けたのだとも断言できない
腕の自由が許された中で、は必死に暗闇の中で翡翠を睨み付けた

「…スザクは変わったね、あたしの中のスザクはもういないんだ」
「…変わったのは世界、の考え方だ」
「考え方?よく言う、あたしは元々ブリタニアなんて腐った世界だと思っていた」
「だけどアッシュフォードでの君はテロリストではなかった」

水道で、彼の体操着を一緒になって洗った記憶がまざまざと蘇る
スザクはを好きだと言った、
もスザクが好きだった、かもしれない
今はもう、分からないのだ、暗闇に堕ちたスザクを好きでいたのか

「…また、あそこに戻すの?」

ふい、と顔を背けたが発した言葉だった
スザクは暫しそこ声音を伺い、それから視線を落とす

「ああ、シュナイゼル殿下のご命令だからね」
「シュナイゼル、ね…あの男も馬鹿だ、いくら監禁されたとしてもあたしはブリタニアなんかに屈服しないのに」

そう、迷いのない声が僅か月明かりの灯る暗闇で響く
スザクはというと、その真っ直ぐに響いた声に乗せてふと彼女はいつも真っ直ぐだった、と懐かしむかのように瞳を細めた
真っ直ぐでいて、強くて、そして脆い
見えない何かに怯えている彼女を護ってやりたいと思っていた、この腕で、
しかしは黒の騎士団の人間で、そしてゼロのルルーシュの"一番大切な人"でもあった
嫉妬、であったと言われれば否定もできない
しかし勿論、ユーフェミアの仇だと言っても否定はできないだろう

、僕は君が好きだった」
「…」
「君がルルーシュを見ていたとしても、僕は君が好きだった」

しゅる、と布の擦れる音を漏らしてがスザクに背中を向ける
微かに肩が震えているように見えたのは見間違いではないようだ

「…だから、ごめん」

びくり、と華奢な肩が揺れる
スザクは確かめるように、噛み締めるように、言葉を紡いだ
一字一句全ての耳にきちんと届くようにと

「…謝るの、ね…そんなの気休めにもならない、申し訳ないのならルルーシュのところへ返して」
「それはできないよ、君にも相応の懺悔が必要なんだから」
「…懺悔、懺悔か、…今此処で命を惜しまないような懺悔をしたとして、あたしは果たして許されるの?」

腰近くまで伸びた美しい栗色の髪の毛は、自分のより僅かに色素は深いものだった
そんな絹のような髪の毛は、ふるふると震えている

「いや、…だから懺悔はいらない、」
「は…」
「僕も君に許しは乞わない、ただ」

にゅ、と伸びた黒革に覆われた大きな手がの肩を掴む

「もう一度だけ、僕を見てほしい」

は何も言わない
何も言わずに、その肩を震わせていた

「僕を見て、そして僕を嫌ってほしい、今よりもずっとずっと嫌いになってほしいんだ」
「…」
「そうして君の中の枢木スザクを非道の人間にしてくれ、…そうしたら…、そうしたら」

僕の中の君も、いつしか消えてくれるかもしれない

途切れ途切れのその言葉に、は俯く
そして上体を屈めて何かに耐えるように自身の腕をぎゅう、と握った
彼女のか細い嗚咽が漏れ始めたのは、それからすぐだった

「…」

ぽたぽたとシーツに雫が零れ落ち、しかしは歯を食いしばった
はルルーシュが好きだ、彼を救いたい、護りたい
だけど全てのしがらみをとった時、はスザクを見ていた
無意識だったのかもしれない、忠実で正義を全うする彼を見ていたのだ
それでも敵同士という立場になんら変わりもなく、そして悲劇は訪れたのである
枢木スザクはいつしか自分を憎んでくれればと、何処かで願っていた
そうすれば、自分の中から彼という存在がいつかは薄れるはずだと、は思惟していたからだ

…」

椅子から立ち上がり、ベッドに身を寄せる
ぎしりというスプリングの軋む音を耳にしながらその小さな身体を思わず抱き締めた
先日と変わらず、病的なまでに衰弱してしまった肢体が、苦しかった

「…、やだ…、」

漏れた声は、震えていた

「いや、だ…、やだ、忘れたくない、スザク、を…こ、んなにも、好き、だったのに」
「…」
「苦しいよ…、どう、してスザクは、あたしを憎んで、くれ、ないの?…憎んで、もっとあたし、を嫌ってよ」

更に抱き込めば、はそろそろと胴体に回る逞しい腕に手を伸ばした
必死に逃れようとしても、最早力の差など歴然としている
それでも首筋に感じる柔らかな栗毛が、切なかった、耐え切れないのだ

「や、だっ、もう、いやなの…、あたしの中から出て行ってよっ」
「…、好きなんだ、」
「っ…、ふ、っ、…、ごめんね、すざく…っ」

伝えたかった、言葉
スザクは睫毛を僅か涙で濡らし、それから白い首筋に唇を寄せた





「あ、…っ、や」

質素な布の下から手を差し込み、滑らかな肌をなぞりながらふくよかなそこに触れた
どちらかといえば小さい方に属するであろう彼女の胸は、しかし驚くほど柔らかかった
ぐ、と胸を掴み、掌全体で円を描くように揉みこめば切ないような吐息が漏れる

「ん、」

後ろから抱き込むように愛撫を続けるため、その快感から逃れる術はない
既に反応を示す突起を親指と人差し指でくりくりと捏ね、器用に掌では胸全体への愛撫を続ける
初めて触れるの身体は、先ほどジノに酷使されたため悪戯程度にでもすぐに反応を示した

「…ジノに、ひどくされた?」
「…ぅやっ、ん、」

羞恥を感じるのだろう、答えまいとするにスザクは右手はそのままに左手を下降させた
と、行き着くのは覆い隠すもののない秘部、足と足の間に手を滑り込ませればびくん、との腰が跳ねる
つい、と中指を立てるととろりとした愛液が指に付着した
窪みに指を埋めれば既に愛液が滲み出し、その奥が引くついているのが分かった

「っ、…」

愛液を入り口に塗りたくり、スザクは中指をつぷりと差し込んだ
瞬間漏れる嬌声は信じられないほど甘いもので
ずっとずっと触れたかった、自分のものにしたかった愛しい身体、スザクは自然と熱が高まるのを感じていた
中に入れた中指を浅い位置で抜き差しを繰り返し、より一層の快感を引き出す
その曖昧すぎる刺激に、は涙を呑んで口を開いた

「…ぁ、んぅ、…」
「…可愛い、

ぎゅう、と抱き込んでそうしていきなり中指を付け根まで秘部に挿入する
震え上がる身体を腕で押さえつけ、内壁を撫でるように愛撫を続けた

「…(醜いな、僕は)」

こんな強引としかいいようのない方法でこの身体を手に入れるだなんて、スザクは一人思惟した
仮に彼女がスザクを見ていたとして、其処から先に未来はないのだ
あるのは交わることのない平行線上での戦いのみ
その漠然とした現実に怯え、スザクは中指だけならず続いて人差し指も挿入した

「んっ」

とろり、ジノが吐き出した白濁液が其処から漏れた
それを指先に感じると、嫉妬とも言いがたい真っ黒な感情が少年の心中に渦巻く
彼は、ジノは、ずっとずっと欲しかったこの少女を押さえつけて熱を高めて腰を突き上げて
ふわふわとした恍惚が一気に背中を走った

「ねえ、、ジノは、優しくしてくれた?」
「…っ、あうっ、あっ、ん」
「…僕よりジノのほうがいい?」

言葉のあと、ゆるゆると首を横に振るは快感による生理的涙を流しながら唇をかんだ
返答とも取れるその仕草に、スザクはさらに強く小さな肢体を抱き締め指を引き抜く
空虚感に小さな悲鳴が漏れた後、スザクはを前に押し倒した
当然スザクに背中を向けた状態だったは前のめりに倒れこみ、シーツに顔を埋める状態となった
そしてスザクに腰だけ高く持ち上げられると、ふ、と其処に息をかけられる
とろり、乾くことのない愛液が太腿を伝ってシーツに零れた

「…、痛かったら、ごめんね」

今更、そんな質問を投げかけスザクはぐ、と秘部に自身の熱く昂ぶったそれを押し付ける
期待から入り口をきゅ、と閉めてしまうの腰をそっと撫で、推し進めた

「んああっ、」

ぐちゅりと粘着質な卑猥な音を漏らしてスザクは先端をの中に押し入れる
信じられないほどに締め付ける中に、僅かに表情をゆがめ、スザクは再び腰を掴んだ
熱く柔らかい内壁にある種の酔いを感じたスザクは、一気にそれを挿入する
ずるんと飲み込まれたそれに、は苦しげに嬌声を上げた

「あうっ、んん、」
「…はっ、のなか、気持ちいいよ」

そっと手を伸ばし、半ばシーツに埋められかけている乳房を掴んで快感を煽る
その度苦しいほどに締め付けられ、スザクは眩暈がするほどの快楽に溺れた
引きちぎられんばかりに締め付けられる中より一度腰を引き、再び勢いをつけて熱をねじ込む
そうして手をの足と足の間に滑り込ませると、スザクの熱が受け入れられる其処より僅か上に感じる突起を指でつまんだ

「あっ!やあっ、ぅあ、ん」

身体が大袈裟に揺れ、甲高い声が響く
くりゅ、と充血した突起を潰せばは快感に涙を零した
相変わらず中はどくどくと脈打ちながらスザクのそれを甘く締め付ける
予想以上の快感に、スザクはふと、理性の焼ききれるのを感じた
強く薄い腰を掴み、自分の欲のままに腰を打ち付ける
最奥に突き上げるたびに零れる嬌声と、引き抜いた祭に溢れ出る愛液
太腿を伝うそれは、果たしての愛液か、スザクの先走りの液か、交わってシーツに堕ちた

「あっ、んあっ、くうっ、」
、」

呪文のように、彼女の名前を呼び続ける
超えてはいけない一線を越えた、この優越感
決して交わることのなかった罪を背負う二人がこうして交わっているという現実
全てが全て甘美に思えるほどに、既にスザクの脳に正常な思考はなかった
ただ目の前に晒される少女の痴態と快感に、溺れていくだけ、

「…っ!」

一回り質量の増えたそれに、はシーツに顔を押し付けて声を抑えた

「…、…、好き、だよ」

何度か絶頂を向かえ、睡魔に堕ちる瞬間に聞こえた涙交じりの声、
ねじ込まれた先に熱い熱い欲を吐き出され、は瞳を閉じた

「…ごめんね、、ごめん」

ぽつり、行為のあとに漠然とスザクは現実を見つめ、一筋涙を零して呟いた


(果たして真実の愛は彼女に届いたのだろうか?)